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『アフター0』(岡崎二郎)、再読中2

旧版4〜6巻の、特にお気に入りのエピソード。
◆「語れよ真空の中で」(4)
2025年、人類が月面基地を建設してから10年が経ち、様々な実験が行われていた。月に来た最初のテレパスである早坂真由美は、月面の真空中で、何者かの声を聞く。訓練されたテレパスである彼女にとって、無意識に他人の心を読む事は有り得ない。ならばいったい誰が、彼女に呼びかけてきたのか……? 真由美は自分の知らないテレパスが基地に存在する事を考えるのだが……。
実はシリーズでは珍しい、地球外が舞台のエピソード。オチの美しい逸品。
◆「宿命の構図」(5)
ある日入った理髪店の鏡に、自分ではない別の人間の姿が映っている事に気付いた男。よくよく観察すると、理容師はワニやゴリラ、他の客は犬の姿で映っていたりする。その鏡が、人の前世を映すのではないか、と考えた男は鏡を譲って貰うと、小さくカットして外に持ち歩くようになった。すると、多くの人々の前世は動物や虫、それどころか前世も人間であった人間は自分ぐらいである事に気付いて……。
前世の映る鏡、と輪廻転生を用いたブラックユーモア。ショートショートの構成の活きたエピソード。
◆「願かけのバー」(5)
“魔法使い”を名乗るバーのマスター。前金で1千万貰えれば大抵の願いは叶えてみせるという彼は、客に10年前にある女性の願いを叶えた、という思い出話を語る。
“大人の童話”といった風情のある、出来の良いショートショートショートショート系列では、トップクラスの傑作。
◆「マイフェアアンドロイド」(5)
最高級のブレーン・アンドロイド(アイリス)を友人から借り受け、記憶ソフトの不法コピーに成功した、日高。だが、完成したコピーのアンドロイド(アイリス2)は、オリジナルと違い、どうしようもなく乱暴でがさつであった。コピーの更なる研究とともに、アイリスの提案でアイリス2の再教育をしていく内に、日高は徐々に、アイリス2の持つ“人間らしさ”に惹かれるようになるのだが……。
ベタなストーリー展開から、最後の一ひねりがいい味になっているエピソード。スタンダードに一味加えるタイプの話で、作者のセンスが出た話。また、ヒロインキャラの可愛さは、シリーズ屈指。人工知能キューイがらみのエピソードもですが、人間とロボットの境界、というテーマは作者お気に入りなのか、シリーズでも何度か扱われ、力の入ったエピソードが見られます。ここには挙げませんでしたが、6巻収録、恋をした人工知能が心中を図ろうとする「想い出は結晶の中に」も、このテーマの飛び道具として、印象深いエピソード。
◆「進化の果て」(6)
大洋電気が新たに開発した、コンピューターソフトを造る為のソフト、「C−エボリューション」。進化のメカニズムを用いて人工知能を開発するこのソフトにより、AIの性能が大幅に上昇、大洋電気はそれを用いて家庭用ロボット“ハウスキーパー”を開発する。やがて人間とほぼ同じ動きまで可能となったハウスキーパーは更に進化を続けていき……。
大洋電気が人工知能を開発するとろくな事にならないシリーズ(笑) 進化と人類の未来をテーマにし、シリーズを彩ったキャラクター達が多数顔出し出演するなど、集大成的なエピソード。名篇「ほうき星翔ける街角」の二人が、オチを締めるのもお気に入り。
◆「無限への光景」(6)
シリーズ最終話。SF短篇集の締めを飾るのにふさわしい最終話。