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大トミノ祭:駆け足で『聖戦士ダンバイン』

マーベルさんは可愛い。肩甲骨美人。
ただしマーベルさんの、男の趣味は微妙だ。
導入のわかりにくさもよろしくないのですが、序盤〜前半は何が悪いって、主人公(ショウ)と、部隊リーダー役(ニー)の二人が、共に困った感じな事。
とにかく主人公が猪突猛進独断専行抜け駆け先駆け大好きついでに喧嘩も大好き。
一方ニーは、大義と女との間で揺れ動く上に割とヒス持ちで上司には御免被りたいタイプ。
その上で、異世界バイストン・ウェルを舞台にしたハイファンタジー的な志向を持ちながら、富野監督の暗黒面が出まくった人間関係や政治劇が展開するので、なかなか大変。
主人公達が遊撃部隊的なポジションになること自体は面白いのですが、結果として、わかりにくい話がますますわかりにくくなって良くなかったという。ここは惜しい。
細かい所では、基本的に作画の節約なのでしょうが、バイストン・ウェルの歩兵が楯を持っていないのはやはりどうか。オーラシップからぞろぞろと降りてきた歩兵が、楯無しで片手剣だけ振り回しているというのは。ファンタジーとしては少し冷める。
16話「東京上空」から一連の、一旦地上編は実に酷い。面白いという意味で実に酷い。
バイストン・ウェルの女騎士ガラリアとの交戦の最中、増幅したオーラ力の光で瞬間的にオーラロードが開き、地上界へと飛ばされるショウとガラリア。ショウはダンバインごと自宅の庭に飛ばされるが、家出(と認識されている)して音信不通になっていたと思ったら、突然、変なロボットに乗って変な鎧を着ておまけに変な妖精まで連れて戻ってきた息子を、両親(特に母)は簡単には受け入れられず、偽物ではないかと疑う。
その頃、地上で寄る辺の無いガラリアは増幅するオーラ力の赴くまま、スクランブルしてきた防衛隊(自衛隊に相当)の戦闘機と交戦。『ダンバイン』世界は二次大戦と直結しているので、東京上空にオーラバトラーが出現すると、割と速攻で日の丸つけた戦闘機が迎撃に出てきてミサイルぶっばなしてきます。ガラリアのオーラバトラーが放ったミサイルは、大爆発で数万単位の人々を焼き殺していく。
バイストン・ウェルがどうこう……」と言っても理解される筈もなく、ついには“ショウ・ザマの体を乗っ取った/或いはザマ家の息子を名乗る、宇宙人”扱いされるショウ。ショウは何とかガラリアを説得して一緒にバイストン・ウェルに戻る方法を求めるが、ガラリアは聞く耳を持たず、未知のテクノロジーに脅威を覚える防衛隊の反応もあり、状況はひたすら混迷を深める。
ダンバインと一緒に地上に戻ってきてわけのわからない事を言う息子に対し、教育評論家の母は立場もあって完全拒否、まだ父の方が理解しようとするが、そんな父はやたらスカートの短い秘書と不倫関係とか、さすがにいったい誰に見せたいアニメなのか。
色々あって両親との関係修復を諦めたショウが、防衛隊に半人質扱いの両親を解放させるべく宇宙人疑惑を認め、それを聞いた父が「あの子は私たちを棄ててくれたんだ」と言うのは、脚本・コンテどこで入ったのかはわかりませんが、富野会心の展開。これをやりたかったんだ、というのはわかる。

「あなた、やっぱり……」
「違うチヨ、あの子は私たちを棄ててくれたんだ。後に残る私たちの事を気遣って……」
「棄ててくれた?」

親が子を棄てるでのはなく、子が親を棄てるのでもなく、子が棄ててくれたと親が言う、というのは凄い。
で、共にバイストン・ウェルに戻ろうとしたガラリアがオーラ力の増大に機体が耐えきれず吹っ飛んだ次の回の冒頭で、ダンバイン1機で勢いでバイストン・ウェルに戻ってしまうのは、悪い意味で酷い。
一応、バイストン・ウェルで助けを求めたエレの霊力に反応したという事にはなっているけど。
3話もかけて一生懸命に戻ろうとしていたのは何だったのか。
ダンバイン』は、戦闘シーンが長い割に、あまり面白くないというのも、一つ困ったところ。ずんぐりむっくり型のメカが空中で実体剣でちゃんばらするというコンセプトが難しいのか。微妙に人型で無い所(人間よりは寸詰まり)が、作画的に難しいのかなぁ……今改めて見ると、『ブレンパワード』や『キングゲイナー』の戦闘は、オーラバトラーの空中戦の雪辱の意識が多少はあったような気もします。
バイストン・ウェルに戻ったショウは母船であるゼラーナと合流。落ちぶれているバーン、ビショットに近づくトッド、リムルの救出と別離、シーラとの出会い、フォイゾン王の死、ビルバイン登場……など色々あってバイストン・ウェルでの混迷の闘争は続き、遂にまとめて地上界へ吹っ飛ばされるオーラマシンと関係者達(第32話)。ショウとガラリアが一度やらかしたせいで、ショウ同様にそれぞれ自宅へ飛ばされた元・地上人達も、あちこちで宇宙人かも扱い。行方不明だった息子や娘が家に帰ってきたけど、それは“子供に似た者”かもしれない、というのは凄くP・K・ディック。
そんな中、ちゃんと娘の言い分を聞いてくれるマーベルさん家。アメリカの田舎の牧場の人らしく、とりあえず一回は父さんが銃を向けるけど。銃を向ける/向けられる事への耐性が、さすがアメリカ人は違う(おぃ)
ところで『ダンバイン』世界のパイロット達は、オーラ力が上昇すると生存スキルが上がるのか、けっこう皆、爆発する機体から飛び降りて脱出したり、撃墜されて機体ごと海に叩きつけられても平気で復活してきたり、しぶとい。
特にトッドと黒騎士。
一方、地上からの召喚組でビランビーを操っていたアレンが32話で地上へ吹っ飛ばされる前に撃墜されているのですが、コックピットから飛び降りる絵があるのだけど、調べたらこれは死亡しているとの事(と、富野監督が明言しているとの事)。
アレンは声が若本規夫(当時:紀昭)で格好いいのですが、今作は毎度お馴染み戸谷さんに加え、若本さんがナレーションその他を担当している為に、やたらにモブキャラの声が全体的に渋い。
33話は珍しく、オーラバトラーがちゃんと動いて、戦闘が割と格好良かった。
このあと終盤に向けて、戦闘の作画は徐々に改善。
アメリカ西海岸で再会したショウとマーベルは、コロンビアでゼラーナと合流。シベリアでソビエト軍の攻撃を受けるゴラオンを発見し、救援する。
核ミサイルを大安売りのソ連、一方、フランス空軍(?)はジェリルにすっかりたぶらかされていた(第35−37話)。
……と思ったらバンダイチャンネルの各話あらすじを確認したら、ギリシァ軍(表記まま)でした。ジャンヌ・ダルクジャンヌ・ダルク言うから、フランス人かと思いました。ギリシャだったら「ジャンヌ・ダルク」でなく、「アテネの再来」ではないのか(笑)
今川泰宏がやらかしたというハイパー化したジェリルを退け、東欧でグランガランと接触するショウ達とゴラオン。欧州に根を張りつつあるビショットのゲア・ガリングを北海で叩こうとするが、ショウの誘導作戦が失敗し、パリ炎上(第40話)。
オーラバトラーを借りて世界中を好き勝手に破壊しまくって、だんだん怪獣映画みたいになってきました。
にしても、奥歯に仕込んだ起爆装置が活用されるのを、久しぶりに見た気がします。しかも主役が使用。
後ここで、ゲア・ガリングを脱出しようとしていたリムルが闖入した為に、ビショットにとどめの一撃を打ち込めなかったショウが「リムルが居なければあのハッチを爆破できるのに」言っちゃうのですが(黒騎士との一騎打ちで助けられた事は棚上げ)、『ダンバイン』世界で事態がややこしくなるトラブルの原因の半分以上は、リムルか黒騎士のせいな気がしてきた。
黒騎士様は、エンディングのキャストのところでわざわざ「黒騎士」になっているのに、表示位置が「バーン・バニングス」の時と一緒で、劇中でも劇外でも、全く隠す気がありません。
まあ初回からずっとキャスト表記の一番上に「シャア・アズナブル」で通した某サングラスよりはマシですが。
地上界でショウに撃墜された後、拾ってもらった船の片隅で、荷物(たぶん、鎧兜が入っている)抱えて体育座りしながら泣き出したり……どうすればいいんだこの人……。
と思っていたら次の回の冒頭で、凄くあっさりと味方に拾ってもらえました。なんか『ダンバイン』はこういう、とりあえず振ってみたけど、次の回にはどうでもよくなっている、みたいな台無し展開が目立ちます(^^;
イギリスは女王会談の結果、シーラ側に協力し、ヨーロッパ各国の軍の協力を取り付ける事に。地上に出たオーラマシンの強力さを示す演出なのですが、イギリス軍も、核ミサイル撃ちまくり。
ノルウェーオスロではゲア・ガリングに徴用された地元民が反攻したりしつつ、戦況は一進一退。グランガランとゴラオンの共同戦線に対し、アメリカを支配下に置いたドレイク率いるウィル・ウィプスが東進。ドレイクとビショットを利用し、少年時代の自分の苦労の原因となったアメリカを足下にひれ伏させようと機を図っていたショットも、新造オーラシップ・スプリガンを駆り、参戦。
一応、グランガラン&ゴラオン勢〔善玉〕vsドレイク連合軍〔悪玉〕という構図なのですが、悪玉サイドの三巨頭全員がそれぞれを利用しようとしており(本来の序列としては、ドレイク→格下の同盟相手ビショット→ドレイクの部下ショット)、そこに何故かビショットに近づいているルーザ(ドレイク妻)が絡んでややこしい。というかこのルーザが面倒くさい。リムルと黒騎士の次ぐらいに面倒くさい。
加えて、主人公サイドは主人公サイドで、案外と、美少女女王様二人の連携が取れていないのが、ますますややこしい。というかこの二人が、戦略眼も無いのに独自の判断で動くのが、タチが悪い。
双方、れっきとした軍人の副官が居るのですが、女王様、権力あるから物凄くタチが悪い。
43話、いつ死んでもおかしなくなさそうだったのに予想外に生き延びていたゼットさんがとうとう死んでしまいました。
しかも凄まじく刀のサビ的に。
この回は、ゼットさんとマーベルが共に死亡フラグを張り合うのですが、ゼットさんの方が成立。
ロンドン上空で、マーベルを救う為に一瞬ハイパー化してしまったショウは、マーベルとエレの力により何とか自分を取り戻す。
そういえば富野アニメで、主人公カップルが割と早い段階で成立して、いちゃいちゃ(当社比)しているって珍しいよーな。
一方、前半から微妙に存在意義のあやふやだったキーンは、地上で展開が盛り上がるにつれて、どんどん空気になっていく。
そしてとうとう、あちらこちらで軍を指揮する立場の人々が前のめり気味なのは、拡大しすぎたオーラ力のせいにされました(44話)。
一応、ジェリルがオーラ力でギリシァ軍をたぶらかしていたのが、オーラ力が人の心により強く作用していく、という伏線にはなっているのですが。
45話、集結しつつあるドレイク連合軍に対し、ワシントンを人質に取られている筈のアメリカ軍から空母カールビンソンが「反乱軍」としてゼラーナに合流。
相変わらずビショットさんちに間借り中の黒騎士様、整備不良を言い訳に出撃を遅らせる。
「フッ、私は自分の判断で戦わせてもらう」
……どこまでダメな人を貫けば気が済むのか。
戦場でハイパー化したトッドはショウらを追い詰めるが、ビルバインの二刀による攻撃を受けてコックピットを突き破られる。

トッド「いい夢を、見させてもらったぜ」
ショウ「これが、いい夢でたまるかよっ!!」

死に様は、なかなか格好いい。
トッドは明らかに途中で黒騎士とかぶってしまって、作り手側にも自覚はあったぽいのだけど(毎度主人公に突っかかって撃退される役は必要だけど、二人はいらない)、キャラ造型は後のジェリドに引き継がれていくわけで……どちらにせよ、東部のヤンキーはろくな目には遭わないという事か。
46話、「リモコン作戦」……あと4話ぐらいで終わるのに、どうしてこんなサブタイトル(笑)
46−47話、遠距離からのミサイルを防ぐオーラバリアを破るべく、爆薬を積んだ戦闘機を至近距離からリモコン操作に切り替え(乗員はパラシュートで脱出)、ミサイル代わりにするという特攻作戦に打って出るアメリカ軍は、ゲア・ガリングに大損害を与える。
やはり、本気になった米軍の物量作戦は世界最強なのか。
ショット・ウェポンを狙い撃ったゼラーナがとうとう轟沈。無理難題ばかり言う嫌な感じの上司(ニー)の横で、地味に出番が多くて割と好きだった操縦士(ドワ・グロウ)がけっこう好きだったのですが、生き残りました。良かった。そのあとオーラバトラーで前線に出たものの、結局、最終回までに死んだ描写などは特にされませんでしたが。
大西洋上に、ハイパー化を誘因するオーラ力の場が出来つつある事を危惧したドレイク達は、アメリカを横断し、一気に軍を太平洋まで退ける。確かに、ハイパー・グランラガンは、先端が成層圏とか到達しそうで、嫌だ。
一方、乱戦の中でようやくゲア・ガリングを脱出したと思ったらニーの元には行かず、父の所へ母の浮気についてどう思うか聞きに行くリムル、本当に面倒くさい。
娘の言葉により、妻の密通を(ようやく)知ったドレイクはそれを直接は取り上げず、遠回しに匂わせながらビショットに先鋒に立つ事を要求する。太平洋上でゲア・ガリングとグランラガンの交戦が始まり、機を窺うスプリガンのショット、後方から戦場へと向かうゴラオンとウィル・ウィプス。そして、母を許せないリムルは決戦の戦火の中、父の名代としてゲア・ガリングへと向かう……。


さあ、 ミ ナ ゴ ロ シ の時間だ



遂にハイパー化し、グランラガンに大ダメージを与える黒騎士のガラバ。ゴラオンで交戦空域に入ったエレは黒騎士のオーラ力を抑え込み、その憎しみのオーラを中和して、霊力と生命力を使い切る。
自ら母ルーザを討とうとし、返り討ちにあって額を拳銃で撃ち抜かれるリルム。
リルムの死を目にしたニーのオーラバトラーが放った機銃で、ぼろ雑巾のように撃ち殺されるルーザ。
正直、この親娘はこのぐらいの死に様でないと責任取れないよなぁとは。
エレの亡骸を抱えた副官エイブは、満身創痍のゴラオンでゲア・ガリングに特攻。ビショット・ハットを道連れにし、二つの巨大戦艦が沈む。
エレ様が息絶えた所から最後の特攻によるブリッジ崩壊まで、エレ様をお姫様抱っこしたままのエイブ(爺さん)が物凄く格好いい。
それにしても、最後の最後まで納得いかなかったのは、ビショットはルーザのどこが良かったのか(笑)
混戦の中、ドレイク暗殺を謀るが失敗したミュージィがウィル・ウィプスから脱走する際に攻撃を受け、どさくさ的に死亡するキーン。
正直、ここでどさくさで殺されるなら、見せ場回を貰って早めに死んだ方がマシだったと思います、ハイ。
グランラガンとウィル・ウィプスの相討ちを目論んだショットは、ビルバインダンバインに捕捉され、駆け戻ったミュージィと共に爆死。
この攻撃時、黒騎士のガラバの一撃で致命傷を受けたダンバインのマーベルは、気丈にショウへドレイクを討つように告げ、その後ろ姿を見送りながら、爆発して散る。
もろともに果てようというシーラの意図を見抜き、ウィル・ウィプスへグランラガンの特攻を誘導、戦場を離脱して再起を図ろうとしたドレイクは、ニーの強襲を受けて炎に包まれる。
だがそのニーも、ドレイクの護衛部隊の集中砲火を浴びて戦死。
墜落寸前のグランラガンは遂にウィル・ウィプスと激突。シーラはショウへ、地上に残る憎しみを断つ事を命ずる。
手足をもがれたビルバインは最後の力でガラバのコックピットを潰すと、コックピットを開いたショウは生身で剣を抜き、仮面を脱いだバーンへと躍りかかり、文字通りに刺し違える。
「シーラ・ラパーナ……浄化を!!」
今、憎しみのオーラ力は全て断たれた。シーラは全ての霊力を解放し、2隻の巨大な戦艦の誘爆が戦場を包み込み、全ての魂はバイストン・ウェルへと還っていく……。
ただ一人、戦場の爆風にあおられて海に投げ出された、チャム・ファウを除いて――。

――バイストン・ウェルの物語を覚えているものは幸せである――
――それゆえに、ミ・フェラリオの語る、次の物語を伝えよう――



ううーん、『Zガンダム』が今ひとつという人の『Z』を見終わった時の気持ちがこんな気持ちだったのだろうか、みたいな気持ち。
(なお私は、TV版『Zガンダム』、大好きなんですが)
最終決戦時の主役メカが夜間迷彩とか、悪質な嫌がらせなのか。
あと、スコット艦長(45話から協力してくれている、カールビンソンの艦長)が、最後の方、妙に訳知り顔で語っているのが不思議で面白い(笑)
約30年後の今だから言える事も多いとはいえ、色々と失策の目立つ作品。
とにかくまあ、幾ら何でもキャラクター数は多すぎます。キャラクター配置に関する動物的勘には定評のある監督ですが、今作のキャラクター配置はアニメというよりは小説的で、そこはハッキリ、富野監督がバランスを失敗している。
これは恐らく、戦記物的なコンセプトを監督が持っていたからではないかと思うのですが、戦記物だとしたら各国に王が居て将軍が居て騎士団長が居て……というのはわかるのですが、アニメで展開するには、削った上でなお多すぎたかと思います。
ちなみに、ラスト2話の、主要戦没者リスト。
〔エレ→リムル→ルーザ→ビショット・エイブ→キーン→ショット・ミュージィ→マーベル→ドレイク→ニー→ショウ・バーン→チャム以外の関係者全員〕
やり過ぎというよりも、多すぎ。
演出面では特に、ある種の監督のリアリズムの発露だったのかもしれませんが、オーラバトラーのデザインに極端な特徴が無いので、乱戦時にダンバインビルバイン以外の区別が付かず(特に敵)、戦闘時に主要なキャラがどこで何をしているかわかりにくかったのは、厳しかった点。おそらく黒騎士が最終的に飛行機タイプのマシンに乗ったのは、その辺りがあったのかと思われますが。
あと演出と脚本の両面に言える事ですが、戦闘シーンが長くて多い割には、一つ一つの戦闘における戦略や戦術が見えにくかったのも残念だった点。これは地上に出てからが顕著で、シーラやエレに加え、実はビショットも戦略/戦術家としては才が無いので、全員が場当たり的に泥仕合しているからなのですが(^^; ここはもう少し頑張って、面白くしてほしかった。
時代背景でいうと、1983年2月から放映。
いわゆるソード&ソーサリー的な国産ファンタジーの代表的作品となる『グインサーガ』が1978年スタートとはいえ、この時点では12巻まで。『ドラゴンクエスト』が1986年発売。海外に目を移せばハイファンタジーの文化は脈々と存在しますが、それらを考えるとロボットアニメの体裁を取ったハイファンタジー、というのはかなり意欲的な挑戦だったのではないかと思われます。
ハイ・ファンタジーなのに、世界観が第二次世界大戦から直結していますが(この点は、小説『リーンの翼』ではより顕著)。
全体的に監督の思い入れが先行気味な点に関しては監督が反省して、展開を変えるなどした模様。
またその思い入れ故か、この後の監督作品の幾つかには、『ダンバイン』で用いた要素や、失敗を踏まえて改善して使ったとおぼしい要素などが幾つか見受けられ、改めて見ると『Zガンダム』はかなり、『ダンバイン』の反省を踏まえていると見えます。
一言で乱暴にまとめると、ならし運転からギアを上げていくべきが、いきなりフルスロットルでふかしてしまった作品、という所でしょうか。しかもオフロードに突っ込んでしまった(笑)