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『空飛ぶ広報室』(有川浩)、感想

空飛ぶ広報室

空飛ぶ広報室


航空自衛隊の戦闘機パイロットであった空井大祐は、憧れのブルーインパルスを目指して日々の訓練に励んでいたが、その夢の直前、交通事故に巻き込まれて右足を骨折、パイロットの道を断たれる。失意の彼が総務班を経て転属となったのは、防衛省――航空自衛隊航空幕僚監部広報室。自衛隊の隊外PRを担当する部署であった。そこで彼が出会ったのは一癖も二癖もある上司と同僚達、そして、不本意ながら自衛隊の長期取材をする事になった、自衛隊嫌いの美人TVディレクター……。
最初に書いておくと、怪獣は出てきません。
というわけで、有川浩自衛隊ものとして敢えて分類するなら、『クジラの彼』『ラブコメ今昔』の<自衛隊ブコメ>シリーズ(と言われているらしい)の系列か。
主人公は元バリバリの戦闘機パイロット、ヒロインは「空自」を「空軍」と言ってしまうような軍事素人。夢からドロップアウトした二人の衝突と相互理解を軸にしつつ、「自衛隊とは何か」「自衛隊を広報するとは何か」を通して、そこに居る“人”を描く物語。
主人公は29歳ながら、外部と接触する業務につくのは初めてという事もあり、戦闘機パイロットとしては経験値があるも広報としてはぺーぺー。自衛隊というやや特殊な環境を背景にする事で、29歳の新入社員奮闘記、的な構造をとっています。
ビジネス、が主体ではあるものの、全体的には爽快感の強い、青春ビジネス小説、とでもいう内容。
もともとが一話完結形式の連載作品だという事もあり、作中の物事はすべからくポンポン進んでいくので、テンポが良いといえば良いですし、トントン拍子が多くてやや軽いといえば軽いのですが、そこで本質的な題材(国防)の重さとバランス取っているのは、作者の意図的なものか。
格好いいおっさん、べらんめえ系美人、など、如何にも作者らしいキャラクターも登場し、作者のファンなら充分に楽しめる出来。
6章のあの演出には、やられました。
ところでメジャー化してきた所で作者はそろそろ、また怪獣出さないかなぁ(笑)
有川浩の(現時点)最高傑作にして、特撮怪獣映画小説の至宝『空の中』は本当にお薦め。
空の中 (角川文庫)

空の中 (角川文庫)