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『仮面ライダー電王』感想総括2

結局、ちょっと間が空きました(^^; ぼちぼちと、とりとめもなく。
今作の成功の大きな要因となったイマジン。
個性の強い、というかアクの強い彼等は、しかし思い出を持たない存在であり、人間の記憶に依存して初めて自分を保てる存在であった。
そんな彼等が良太郎との旅を通して自らの記憶/思い出/時間を手に入れ、それによって「自分」を確立する。
「自分」を手に入れたからこそ、彼等は消滅を覚悟で良太郎と戦い続ける事を選び、その結果として、誰に頼る事もなく今という時間に存在できるようになる。
感想本文でも触れましたが、積み重ねてきた設定と物語が見事に組み合わさった、素晴らしい着地。
特に、作品として“1年間の物語”であった事に意味を持たせたのは、非常にお見事。
少々メタな要素も含みますが、お笑いも、シリアスも、バトルも、全てあって今を作っている、それが大事なんだ、というメッセージ性を含めた所には好感が持てます。
また、イマジン達が今に存在を確立する事を通して、現実(現在)肯定の物語として落としたのも、良かった点。
途中で一度、「変わった時間のほうが良ければ?」というカイの問いかけがあり、歴史改変要素を含んだ時間ものとして、現在肯定に着地するというのは定番ではありますが、一度イマジンワールド(仮)を見せた上で、改めてそこへしっかりと収めました。
またそこに至る過程として、お互いが別離を飲み込んだ上で、「迷えない」「迷わない」と戦う道を選ぶからこそ、大団円にも一層の味が出ました。
選択と別離の物語としては大団円に過ぎた部分もあるかもしれませんが、そこは前回触れたように、エンタメの勝利、という事で。
基本私、ハッピーエンド好きですし。
後まあその上で、都合良くいつでも出てきそうではありますが、良太郎が最後、パスを返して下車する、という事で物語としては一つの区切りをつけ、良いフィクションの要件としての、現実回帰、を満たしてもいます。
若干の商業的要因を思わせる展開の余裕は含みつつも、フィクションの物語として、一つの区切りをつける、ここは大事なところ。その一線をきちっと引いたのも、作品として良かったと思います。
そしてイマジンといえば、忘れてはいけないのが、着ぐるみ芸。
基本、表情のない着ぐるみ(モモタロスだけは、瞼閉じバージョンのヘッドが何回か使われましたが)に、感情を見せる、スーツアクターと声優の名演。
スーツアクターと声優の演技により、怪人に個性を出していく、というのは長い特撮ヒーローものの中で蓄積されてきた財産といってもいい要素ですが、それを前面に押し出して、イマジンを人間同様のキャラクターとして扱う。
これをある程度割り切って行った事が、非常に成功を収めました。
もともと、戦隊でもライダーでも、変身後はマスクでの芝居となり、それを活かした演出というのもありましたし、例えば『特捜ロボ ジャンパーソン』のように、主役が終始、着ぐるみである、という作品さえも存在します。表情のないところに表情を見せ、物語を紡ぎ上げる。そういった演出の蓄積と、それで面白く見せられるという脚本の自信、それらを重ね合わせて辿り着いた着ぐるみ芸の極致としても、一つの記念碑的作品であったと思えます。
また、後に『海賊戦隊ゴーカイジャー』が、変身後のヒーローに別のヒーローを“降ろす”という、かなり複雑な事をやってのけるのですが、その一つの前段階として、伝統的な仮面劇の延長線上で、仮面の芝居とは別に、人間を着ぐるみに見立ててイマジンを“降ろす”というのも、非常に面白いアプローチでありました。
ここで、非常に僥倖であったのは、佐藤健という俳優を引き当てた事。
憑依状態の演じも分けもさる事ながら、特筆すべきは、声の演技の巧さ。
本職の一流声優達を向こうにして、内部の野上良太郎の声として渡り合ったのは、極めて見事だったと思います。
かなり早い段階から、声音だけで(もちろん演出もありますが)、怒っている/怒っていない、を表現できていましたし、台本を汲み取る力、表情抜きでの細かい台詞へのニュアンスの込め方の巧さは、今作の大きな武器となりました。
特に、これは表情の演技も含めてですが、良太郎があまり“叫ぶ”キャラではないところで、わかりやすく叫ぶ事なく、しかし台詞に確かに力を込めた演技をこなしたというのは、非常に素晴らしかったです。
個人的には演じ分けよりも(そちらも見事なんですが)、喋りの方を評価していたり。