1984年刊行。広義の密室テーマ(典型的な密室殺人、脱出不能な筈の空間での奇妙な犯罪、一本道での消失トリック、など)を集めたアンソロジー。ジョン・ディクスン・カーやエラリー・クイーンの巨匠から、初めて聞く名前まで、全20編の大ボリューム。収録作品も如何にもな古典からスリラー風、歴史ミステリからハードボイルド、そしてSFまでと幅広く、かなり楽しめました。
アメリカ探偵作家クラブ傑作選という事で、クラブ会員の作品から選ばれているようですが、カー、クイーンと、アイザック・アシモフ、ポール・アンダースンの名前が目次に一緒に並んでいるというのが、なかなか凄い。アシモフのは小咄といったものですが、アンダースンのは完全にSFでしたし。
密室殺人をハードボイルドが調理したら、という収録作品も秀逸でしたし、本格推理や狭義の密室ジャンルに囚われない、編者のセンスが光るアンソロジーでした。
中でも面白かったのは、「子供たちが消えた日」(ヒュウ・ペンティコースト)。
小さな街で起きたスクールバスの消失事件を軸に、恐慌状態の人間心理の描き方、それによって発生するサスペンス、胸のすく活躍を見せる老人、と構成が巧みで面白かったです。
いいアンソロジーでした。