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『仮面ライダーW』感想7

◆第9話「Sな戦慄/メイド探偵は見た!」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:三条陸
ヘブンズトルネードなんて、無かったらしい。
それはさておき、人生のバイブルたるハードボイルド小説を事務所の経費で落とそうとして、亜樹子に領収書を投げつけられた翔太郎は、おやっさんの事を聞かれ、挙動不審に。そこへ、5人の依頼者がまとめて駆け込んでくる。それは風都で有名な5人のパティシエの家族であった。
こうして、パティシエの連続失踪事件を追う事になった鳴海探偵事務所。翔太郎、黒スーツ黄色シャツ白ネクタイという、凄いコーディネート。
ところで亜樹子20歳は、翔太郎を「翔太郎くん」「君」扱いですが、翔太郎、幾つ設定なのか。25ぐらいだと思っていたのですが、もう少し若いのか。確かに1年前、バミューダパンツみたいなの履いてすね出しているけど!
この辺り、翔太郎の服装の変化というのは、おやっさんとの別離による翔太郎の変化にまつわる仕込みなのかもしれませんが。
情報を集めて回る翔太郎の前に浮かび上がったのは、警察も捜査できない園崎家の存在。園咲家の主は週替わりで一流パティシエを屋敷に招いており、失踪した5人のパティシエは全て、園咲家を訪れた事があったのだ。
状況的には真っ黒すぎますが、風都の警察はどうなっているか……という所に、地方の名士の力をまざまざ見る思いです。
失踪した風都ベスト1パティシエの娘であり、依頼人の1人がパティシエとして園咲家へ招かれ、亜樹子はその紹介でメイドとして園咲家に潜入する。
今回、「おやっさん」がキーになるエピソードという事で、「不在の父」を軸に亜樹子とパティシエ娘が仲良くなるのですが、パティシエ娘の演技が、少々びみょー。登場人物が多かった影響かもしれませんが、中心になるゲストキャラだけに、ちょっと残念。
亜樹子メイドパートは、ペンと手帳を持って屋敷内をうろついていても咎められないなど、リアリティをぐっと下げて、ほぼ割り切ったギャグシーンとして展開。やや過剰演出気味な部分もありましたが、“肩の力を抜いて楽しむシーン”とする事で亜樹子の顔芸も生き、いい判断だったと思います。
亜樹子の突拍子もない行動を楽しむフィリップから話を聞き、慌てて亜樹子の様子を窺いに園崎家へ向かった翔太郎は屋敷から言いしれぬ不穏な気配を感じるが、亜樹子には散々虚仮にされて追い返されてしまう。
「そろそろ亜樹ちゃんに、真実を話さないのかい? 如何にして僕たちがダブルになったのか。あの日――ビギンズナイトの事を」
「言えるかよ! …………俺が……この俺がおやっさんを殺しちまったなんて事」
それは果たして如何なる意味なのか――亜樹子に対して負い目と責任を感じる翔太郎は園咲家の周囲をうろつき、すっかり不審者状態。そこへフィリップから、次に狙われるのは雑誌で特集された風都ベストパティシエの6位に選出されていた娘に違いない、と連絡が入り急ごうとするが、いきなり取り押さえられる。
「当てよう! 君は若菜ちゃんのストーカーだな」
ハイ、その通りです。
「聞きたまえ。私はね、こよなくこの風都を愛している」
ねじりあげた翔太郎に、蕩々と語り出す霧彦さん、何故か合間合間に遠くを見るのが素敵。
ナスカで活躍できない霧彦さん、生身で翔太郎と接触、そして活躍。この人、色々な意味で、生身の方が戦闘力高いのでは。
その頃、屋敷の厨房ではパティシエ娘が謎の粘液に襲われていた。
「おまえは私の舌先に乗る資格を得た」
粘液が壁に「オメデトウ」と文字を書くというのは面白い。壁の中に引きずり込まれそうになった娘の悲鳴に、翔太郎は霧彦を振りほどくと屋敷の門を乗り越え、ダブル変身。
「なんだこいつ、お菓子の化け物か?」
「化け物とは無礼な。私は味覚の化身だ」
娘を救出し、壁の中から引きずり出した怪人は………………メトロン星人?(from『ウルトラセブン』)
お菓子の妖精メトロンドーパントが口から吐き出すクリームで動きを封じられるダブルだが、メタルの棒にコウモリを合体させ、超音波でクリームを破壊。
ダブルは結構、その場その場で都合良く特殊能力を発動して危機を突破する事が多いのですが、フォームチェンジを含めそれを矢継ぎ早に行う事で、“そういう仮面ライダー”として、成立させています。半分こチェンジの組み合わせで、色々と能力を想像させる遊びの余地があって、設定と物語が巧い方向に噛み合っているのが面白い。
反撃に転じるダブルだったが、戦闘を目撃した霧彦さんがナスカに変身して乱入する。脱ぎっぷりはともかく、特に男らしいわけでもないらしいナスカは2対1でも気にせずダブルを切り刻み、一転、危機に陥るダブル。
「ずいぶん屋敷が騒がしいな……」
その時、園咲家当主がおもむろにドーパントへと変身する――という所で続く。
平成ライダー》シリーズは、原典における「正義の改造人間」(主人公と敵怪人が同根)という要素を如何なる形で入れるか、という所にまずポイントが置かれる事が多いのですが、今作では基本の変身アイテム(ガイアメモリ)が主人公と怪人で共通し、最初から、“普通の人間がガイアメモリを差して超人へと変身する”所までは見せています。
その上で、ダブルと幹部クラスはベルトで差別化、主人公であるダブルは2人で1人という個性化。
ダブルが2人で1人の特殊なドライバーなので、敵幹部クラスが堂々とベルトで変身してみせる、というのはなかなか大胆な逆算の仕掛け。
この辺り、敢えて序盤から見せてきたのは、今作ではそこに軸を置かないという事なのか、或いはこれから捻りが入ってくるのか、というのも楽しみな所です。1−2話では、ガイアメモリの使用者がメモリに精神を蝕まれていくという描写がありましたが、その辺りもどう影響してくるか。
あとミュージアムの、一般人にガイアメモリを販売する事で怪人化するという形態は、犯罪者と契約して怪ロボットをレンタルするというバドー犯罪組織(『ロボット刑事』)の系譜。“自ら手を下すのではなく人間の悪意をそそのかす秘密結社”というスタンスが、00年代のヒーロー物の中でどう描かれていくのかも、期待したい所。