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『機動刑事ジバン』感想33

◆第51話「幻のマユミを斬れ!」◆ (監督:岡本明久 脚本:杉村升/荒木憲一)
何がよろしくないって、このクライマックスにおいて、聞き覚えのある別作品(主に『ギャバン』)の音楽が流れまくるので、劇伴が作品から浮いて聞こえてしまい、物語に入りにくいのが非常に辛い。まあ、数年のスパンがあるのでリアルタイムだとオリジナルに聞こえたのかもしれませんが……。
とうとうバイオロンは街中で直人に直接攻撃を行い、前回、無様に逃げ出したマッドガルボもサイドカーで登場。
「ジバン! いくら戦っても私には勝てん!」
え?
マッドガルボは奪ったファイルによりジバンの行動パターンを把握していると主張し、ジバンは一時退却。前回、マッドガルボが泡を食って逃走したという事実が、ガルボさんの記憶どころか、劇中の時空レベルで消え去っている空気なのですが、50話と51話の間にいったい何があったのでしょうか。
基地へ退却した直人は、周囲の人々を巻き込まない為、敵に把握された行動パターンを乗り越える為、一つの決断をする。
「方法は一つ。田村直人を捨て、自分の心さえも捨て去る事です」
直接攻撃を避ける方法と、マッドガルボとの戦闘対策を一つの台詞にまとめてしまった為、何か得体の知れない発言に。
「全ての人間と関係を絶って、心を無に出来るよう修行してきます!」
敵に動きを読まれない為には無念無想の境地に達するしかない……目的と手段と方法論が色々とちゃんぽんになって混沌としたマリアージュを生み出した結果、とち狂った直人は主題歌で山籠もりを敢行(笑)
とうとう、改造した脳の副作用が、手遅れの段階になってしまったようです。
もはやジバン恐るるに足らず、と大攻勢をかけるバイオロンは、遂に日本侵略作戦を決行。東京の重要拠点を制圧すると共に、ジバン基地の殲滅を目論んで動きだす。
ジバン基地の留守を預かる柳田は、通信電波を発信する事で敢えてジバン基地を発見させてバイオロンにミサイルを撃たせ、その発射位置の特定によりバイオロンの基地を逆に見つけ出す、という捨て身の作戦を敢行。バイオロン基地の発見に成功するも、ハリーボーイもろもとも、基地の爆発に呑み込まれてしまう。
柳田とハリーボーイの命がけの通信を受け、基地に戻った直人が目にしたのは、機能停止するハリーボーイと、事切れる柳田の姿であった。
…………ハリーボーイのボディ、借り物では。
思えば平和を愛するプロパガンダロボットだったのに、暴力の味を覚えた挙げ句に警視庁の手で悪魔合体の犠牲となり、別の人格となってバイオロンと戦った末に最期を迎えるという、数奇な運命でありました。折角ボディを手に入れたのに結局ほとんど基地に居ただけで、ボーイ→ハリーボーイとしたのも、本当によくわからないテコ入れでしたが(^^;
そして今更、柳田の死で盛り上げられても苦笑しか浮かばないのですが、早川といい、とりあえず殺しておけば盛り上がるだろう、という実にぞんざいな扱い。
怒りと哀しみのジバンは、先に柳田が基地を脱出させていた3大メカを敢えて置き捨て、ダイダロスを装備してバイオロンのアジトへと単身カチコミを決行。
まあ、任侠物と時代劇が東映ヒーロー物のベースにあると考えると、実に由緒正しい展開ではあります(笑)
「柳田のオジキの仇じゃぁぁぁぁぁぁ!!」
だが、結局山籠もりが中途半端だったジバンは心を無にしきれず、待ち受けるマッドガルボと秘書ズに苦戦し、更に人間の脳である事を弱点として突かれ、まゆみや洋子の幻像で攪乱される。

「幻影とわかっていて何故斬れないんだ。これが人間の優しさなのか。じゃあ、心を捨て去るという事は、その優しさを捨てるという事なのか」
「バカな! 優しさで地球を滅ぼしていいわけがない。そんなのはまやかしだ!」
「わかったぞ! 心を捨て去るという事は、まやかしの優しさを捨て去り、本当の愛の為に非情になる事だ!」

山籠もりの成果が出たのか、危ない回路と危ない回路がスパークし、この最終局面で戦士として格段のレベルアップを遂げたジバンはまゆみちゃんや洋子先輩の幻をばったばったと切り刻む。
「マッドガルボ! 俺は鬼となったのだ! 大きな愛の為に、鬼となったのだ!」
「大きな愛の為に鬼?!」
「貴様にはわかるまい! バイオロンの怪物に、本物の愛がわかってたまるか!」
愛とか全く関係ないのですけど、一応最終的に今作のテーマという事なのか、凄く強引に「愛」と紐付けした結果、果てしなくよくわからなくなりました(笑) 書き取りの上で10回ぐらい読み返してようやく言わんとしている事がなんとなく繋がったのですが、流れの中で言われるとかなりぽかーんで、バイオロンの怪物でなくてもよくわかりません(^^;
〔バイオロンに正体がばれた→田村直人として生活できない〕+〔バイオロンに行動パターンが読まれている→心を捨て去り無念無想の境地に達するしかない〕=「全ての人間と関係を絶って、心を無にする」という出発点がまずおかしかったのですが、そこから
山に籠もる→結局心を無にできない→幻影にまどわされる→これは優しさなのか?!→いやそれで地球が滅びるのはおかしい→つまりこの優しさは間違っている!→本当の優しさとは幻を斬れないという薄っぺらな自己欺瞞などではなく、時に鬼となる事だ!→それこそが本当の愛!→その愛の為、ジバンは心を捨て去った無の境地に到達する!
せめて「愛」か「無」かどちらか一つにしておけば良かったのですが、成り行きとテーマの都合でその二つを混合した結果、直人さんの論理的飛躍が激しく狂気と神秘体験をともなうものに。
若干、後の『特捜ロボジャンパーソン』に繋がる萌芽を感じる所でもあります(^^;
瞑想で精神を研ぎ澄ませていた所に、幻覚を見せられるという神秘体験を経て覚醒を遂げたジバンは、ジバンラブエンドによりガルボを撃破。最後の意地を見せて立ち上がるガルボだったが、ファイナルキャノンの直撃により大爆発。
鳴り物入りでライバルキャラとして登場した次の回で出刃亀に転落し、その後長らくギバ様のよいしょ要員だったマッドガルボですが、最後までどうにもライバルキャラとしては盛り上がりませんでした(^^; 敢えて女性型にしたのも、ギバ様の趣味という以上に、さっぱり物語の中で活きませんでしたし。
遂にマッドガルボを抹殺したジバンは、まゆみを取り戻す為、ドクターギバの元へと向かう――次回、最終回。
今回の地味に凄かった事1:ジバンの命令に従い、本当に一切助けに来なかった三大メカ。
今回の地味に凄かった事2:最終回1話前だというのに、幻影でしか登場しないまゆみちゃん。

◆第52話「愛の最終決戦!!」◆ (監督:岡本明久 脚本:杉村升
基地の奥でドクター・ギバと対面するジバン。最終話まで生き残った秘書ズは、ギバ様にあっさり粛清されてしまう、ともう使い所が無かったのでしょうが、冴えない最期になりました。サブキャラの中では最も存在感を発揮して面白かったのですが、今作の陰の功労者。
「ドクターギバ! 貴様、自分の部下の命さえも!」
「命? ははははは、命など、人間だろうが怪物だろうが、私にとっては虫けら同然だ!」
「なに?!」
「ふん、虫けら扱いしているのは、人間も同じだな。今更驚くにはあたるまい。そう、私も人間の手によって誕生したのだ!」
五十嵐博士が所長を務めていた国立科学アカデミー・バイオ研究所の廃液処理場の中で、偶然から誕生した怪物、それこそがドクター・ギバ――ギバノイドの正体であった。
この最終回で遂に明かされる、
壮大なマッチポンプ
五十嵐博士は後どのぐらい、世界に災厄の種を蒔いているのか。
「人間共も、科学の名の下に平気で命を弄び、自分の欲望だけを満たそうとしている。この地上で、誰も命を大事にしているものなどいない。バイオロンとどこが違うというのか!」
「ふざけるな! この地球では、生きとし生けるものが全て命を尊び、大切に育んでいる!」
ジバン、反証になっていない(笑)
ギバノイドは、さすがに途中で見せたナメクジモードだとまずいと思ったのか、ドクロやカニや蜘蛛や触手など、色々と混ぜ込んだ、異形の怪物。通常の1.5倍ぐらいのボリュームながらそれなりに動き、頑張りました。
「負けてたまるか! 俺には地球を守る義務があるんだ!」
最後の最後で、ヒーローの戦い、義務に(笑)
元来、直人自信は率直な正義感の持ち主なのですが、最近は「まゆみちゃーん、まゆみちゃーん」と私情しか口に出さないので、直人の持つ責任感と使命感がそういう言葉になったというより、脳改造時に組み込まれた強制プログラムが発動したとしか思えません。
ギバノイドのパワーに苦戦するジバンだったが、飛び込んできたレゾンがギバ様を轢き、窮地を脱する。しかし、ギバノイドの攻撃を受け、レゾン、殉職。
続けて突っ込んできてギバノイドのビームからジバンを守り、イカン、殉職。
至近距離から放ったファイナルキャノンを受けたギバノイドはまゆみを人質に取ると飛行艇で逃走し、バイオロンのアジトは自爆装置によって壊滅する。逃走する飛行艇までジバンを送り届けるも、砲火を浴び、スパイラス、殉職。
80年代富野アニメみたいになってきた(笑)
ギバノイドは、地上にバイオロン帝国を作り上げ人類を抹殺するのだと、飛行艇に備えられた人類絶滅ミサイルのスイッチに手をかけ、愛の為に鬼になったのならまゆみごと斬ってみろ! とジバンを挑発。
そこはヒーローとして乗り越えるべきだと思ったので良いツッコミでしたが、さてどうするのかと思ったら、ジバンはギバノイドにじりじりに近づくと、寸前の見切りでギバノイドだけを貫く、という正面からの力技で解決。確かにこう、心は強くなったのかもしれない。ジバンは落下したまゆみをダイダロスを用いて救出し、洋子にまゆみを預けると最終決戦へと挑み、ここでようやく、本作オリジナルの挿入歌(^^;
炎上する飛行艇の中での戦いは正直全く盛り上がらず、地上墜落後に延長戦があるのかと思って構えていたら、ギバノイドは墜落した飛行艇と一緒に大爆死した扱いとなり、ジバンが無事に戻ってきた所で大団円に雪崩れ込んでしまい、呆然(^^; ギバ様は本作の面白さの9割近くを担っていたキャラなので、せめて、末期の台詞ぐらい与えてあげて欲しかった。
というわけでバイオロンは壊滅し、まゆみと実の兄妹であった事を確認し合った直人は、警察を退職して世界世直しの旅へ。世界にはまだまだ命を大切にしないものが数多くあり、そこにはきっと悪がある、まゆみちゃんが大人になるまでにはきっと世界を平和にして戻ってくる、とえらいロングスパンで悲壮な決意を固めている所から見るに、間違いなく五十嵐博士の負の遺産の後始末です。
賑やかしモンスターズは五十嵐家に回収されてまゆみのペットとして暮らし、セントラルシティ署は、相変わらずだった。
(直人……きっとあなたがジバンだったのね……さよなら、ジバン)
先輩、なんですかその、ジバンには男として興味があったけど、正体が直人なら興味が失せた、みたいなの。
洋子先輩は序盤のゴミっぷりからするとかなり立て直されたとは思いますが、どだいヒロイン化は無理だったものの終盤はほぼモブと化してしまい、もう少しドラマをあげてほしかったです。
滑りまくりのコメディリリーフだった村松は終盤いきなりまともになりましたが、特に転機があったわけではなく、要するに、サブキャラの使い方はひたすら適当。
そして、お茶くみ子は最後まで謎の存在でありました。
旅立ちの前、五十嵐博士、柳田、ハリーボーイの墓に花を供える直人。
三大メカと早川良は完スルー。
早川はともかく(何故か直人に身元不明みたいな墓を勝手に建てられていましたし)、ハリーボーイと3大メカの扱いの差は酷いと思います! そもそも、殉職の必要が全く無かったけど(^^;
ラストは主題歌の2番とともに、1年間の回想。……主題歌は、格好いいのですががが。正直、主題歌と内容の落差は、詐欺レベル。Bパートのかなりをエンディングとして時間を取り、クライマックスバトルからなし崩しに終わるより本来なら好きなパターンなのですが、肝心のクライマックスバトルがマッドガルボ戦より盛り上がらないというあまりに酷い扱いだったので、クライマックスバトルをもっとしかっりやって欲しかったとしか言いようがありません。
えー……

実は生き別れの肉親だった!
支援要員の死亡!
明かされる意外なラスボスの正体!
愛とか人類とか主語の大きい事を語る!
次々と倒れる仲間!
発動される人類絶滅計画!

と、ラスト3話、定番の盛り上がり展開を思いつく限りという感じで突っ込んでみたものの、ほぼ全ての要素がここまでの物語的積み重ねとは連動せず、迷走に迷走を重ねた末にガードレールを突き破って大クラッシュする、という今作らしいといえば実に今作らしい完結を迎えました。最終的には、直人とまゆみが実の兄妹であった事さえ、特に物語に影響を与えなかったというのが凄い(直人の行動や態度が、血が繋がっていてもいなくても全く変わらないので)。
長編の物語としては、最後に強引に盛り上がりっぽいものを作って終わる、というのは80年代作品ではままありますが、単発のアベレージが低すぎるので、とても言い訳が出来ません。途中からほぼ諦めて見ていましたが(主目的が扇澤脚本回のチェックだったので)、正直非常に残念な作品でした。
基本的にはスケジュール上のトラブルに端を発したのでしょうが、まゆみちゃんが放浪モードになる、という連続ネタが背後に常に存在している、というのは使いよう次第ではもっと今日的な物語構造を組める可能性もあったと思うので、その辺りは、惜しい所ではありました。
詳しい敗因分析などは、一応、まとめでやりたい予定。