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『鳥人戦隊ジェットマン』感想11

◆第17話「復活の女帝」◆ (監督:坂本太郎 脚本:井上敏樹
女性陣の買い物に付き合わされていたジェットマン男衆。ここ2話ほど真面目に地球の平和の為に戦っていた凱は、アコと水着を選びながらきゃっきゃうふふしている香を見ている内に何やらゲージが溜まってしまったらしく、突然、香の手を引くと二人きりでエレベーターに乗り込んでしまう。
「ただ突然、二人っきりになりたくなった。それだけの事だ」
慌てて後を追った3人は隣のエレベーターに乗り込み、香を心配する雷太を煽るアコ(笑)
エレベーターの箱の中、という限定空間を切り取り、2人の乗った箱と3人の乗った箱を交互に映すというのが、なかなか面白い雰囲気の映像になりました。
そんな時、地表に隕石が落下し、首都圏広域で機械類の故障とそれにともなう停電が発生。5人もまた、エレベーターの中に閉じ込められてしまう。
凱はおもむろにマッチで火をつけ、その明かりにほっとする香だが、凱はあっさりと火を消してしまい、その表情にちょっと後ずさる香……とアダルティ(笑)
「ガキの頃ママに習わなかったか? 男は狼ってな」
自分で言うと、かなり恥ずかしいぞ、それ!
「俺の気持ちはわかっている筈だ。答えてくれ。俺の事が好きか! ……嫌いか」
凱が懲りずに香に言い寄る一方、隣のエレベーターではアコがひたすら雷太を煽っていた(笑) 凱への批難が口を突く雷太をたしなめる竜だが、雷太はそれに反発する。
「竜なんかに僕の気持ちがわかるもんか! 香さんに好かれようとは思わない。僕なんか、ださいし、格好悪いし…………だから決めたんだ。せめて、香さんを守ってあげよう、って」
「雷太、おまえ……」
ひたすらモテる香、蚊帳の外で可哀想な女子高生。
メンバーの恋愛事情からは一歩引いた位置に居る未成年ですが、なんだかんだ停電中に竜の腕を掴んでおり、この局面で頼りになる男をしっかり判断しているのが、侮れない所です。
まあアコはアコで無差別に煽りまくるので、実は割と無駄な火種を生んでいたりするんですが(笑)
竜が雷太の気持ちを知った頃、隣のエレベーターでは凱が香に、「好きとか嫌いとか考えた事もないからごめんなさい」されていた。
竜を「強い人」と言う香に対し、凱は「頭が固いだけのつまらない男」とくさして、「仲間の悪口を言う最低の男」宣告を受けるが、それはむしろ、凱の望んだ反応であった。
「そうだ、それでいい」
「……え?」
「好きでも嫌いでもねぇって言われるより、いっそのこと嫌われた方がすっきりするぜ! もっと嫌え! もっともっと思いっきり嫌ってくれ!」
“好きの反対は嫌いではなく無関心”という言い回しがありますが、面白い、面白すぎるよ凱。
……しかしなんなのだろう、この番組(笑)
当時、子供に付き合って見ていた親御さんはどんな感想を抱いていたのか。
この年はメタルヒーローメタルヒーローで、駄目な方向にやりすぎてしまった『特救指令ソルブレイン』だしなぁ……(^^; 『ジェットマン』と比べると『ソルブレイン』の方が一見真っ当なヒーロー物に見えますが、『ソルブレイン』は作品の縛りにこだわりすぎて“ヒーロー性”を投げ飛ばしてしまった作品なので、実のところ『ジェットマン』の方がヒーローを正面から描こうとしている、というなかなか歪んだ組み合わせでもあります。
「香さん、無事でしたか?! 何か、変な事されませんでしたか?!」
停電が復旧してエレベーターが一階に辿り着き、再会するや凱に詰め寄る雷太。
「なんだこの野郎! 人を痴漢みたいに言いやがって!」
だが割と、事実である。
そして2人の間に割って入る竜(キチガイ)が、段々と頼りがいのある男に見えてくるという恐ろしい構造(笑) 竜は竜で、感情の一部が死んでいるだけなんですが。
長官から連絡を受けて、落下した隕石の調査に向かうジェットマンだが、そこには一足早くラディゲの姿があった。
《我は、母なり。万物の創造と破壊を司るもの。我は、母なり》
「この声は、まさか……まさか、ジューザ。女帝ジューザ」
そこへジェットマンがやってくるが、隕石が割れて謎の女が姿を現し、とりあえず吹っ飛ばされる5人。女はバイラムの玉座に座り、ラディゲ、グレイ、トランの3人は跪いて傅くが、そこへ現れたマリアは「何この人、わけわかんないわよ?!」という視聴者と同じ反応を見せ、他の幹部と差別化される。
「この御方は女帝ジューザ様。我がバイラムの、頂点に立つ御方だ!」
バイラムの支配者の権利を賭けて地球でゲームを楽しんでいた4人だが、そう……実はバイラムには不在の最高権力者が居たのである。と、悪の組織の手抜きの理由付けと、作品世界の背景設定を噛み合わせつつ、新キャラ登場。
裏次元侵略戦争の激戦の中で姿を消し、死んだものと思われた女帝ジューザだが、実は幾つもの次元世界を征服した後に自ら長い眠りに入り、新しい力を得て復活したのであった。
(こ、これは……まさか、まさか……)
ジューザの身につける、明滅する卵のようなものに目を留めるラディゲ。
「ラディゲ。見てなさい。私はこの世界を地獄の底に叩き落とす。今の私には、人間どもの苦しみや悲しみが必要なのよ!」
こうして帰って来た女社長だが、営業のノルマがきつかったりしたのか、凄く、不評。グレイこそ無反応ではあるものの、いつもの休憩室で堂々と悪口を言い合う幹部達(笑)
「このラディゲ、今更ジューザのもとで働くつもりはない。必ずこの手で奴を倒す。奴がセミマルを生み落とす前に」
ジューザが身につけていたのは、一瞬で大地を割り天を焦がすという、究極の魔獣・セミマルの卵。セミマルは人間の苦しみや悲しみを吸収する事で成長し、受胎する。その為にジューザは地上に幻影を飛ばすと、そこからビームを放ち、それを浴びた人間が激痛に藻掻き苦しむとその体から透明な結晶体が生じるのであった。
肌を突き破って出てくる結晶は、血糊も用いて、なかなかのグロ演出。子供が地面でのたうち回ったり、かなりハードめの描写で、苦痛がよく表現されています。
卵を成長させながら高笑いするジューザの前に立ちはだかるジェットマンだが、またもあっさりと蹴散らされ、香をかばった凱が結晶ビームを浴びてしまう。更に突然現れたラディゲがジェットマンを叩きのめすが、その真意は、ジューザに変わらぬ忠誠を捧げていると油断させ、不意を打って襲いかかる事にあった。
だが、圧倒的な強さを見せるジューザはラディゲを翻弄。更に本性である魔獣の姿に変身すると赤色光線を浴びせ、空中で回る回る超回るラディゲ。
ひたすら空中で縦回転を続けるラディゲですが、どうやって撮っているのだろう……? 吊って横回転している所を、縦に見せているのかぁ……景気良く回転していて結構凄い(笑)
「おまえには最も屈辱的な罰を与えよう。人間の姿になり、虫けらのように生きるのだ」
ジューザの力によりバイラムから追放されたラディゲは、白いジャンパー姿で海岸に転がると、エフェクトのかかった美少女に拾われる……。
一方、結晶ビームの作用により激痛に苦しむ凱の体からも結晶が突き出し、凱はスカイキャンプを飛び出していくのであった……と、かなり盛り上がって次回へ続く。


◆第18話「凱、死す!」◆ (監督:坂本太郎 脚本:井上敏樹
かなり掟破りの5文字(笑)
「けっ! 同情か!? 責任感か!? そんなんで優しくされるのは真っ平だぜ!」
追いかけてきた香を振り払う凱は、身勝手だけど誇り高く、気ままに生きたいけど負け犬にはなりたくない、と実に男の面倒くささが凝縮されています。
ジューザの持つセミマルの卵は順調に成長していき、凱も含めてそれを止めようとするジェットマンだが、全身から結晶の突き出た男が巨大な結晶体に変わるのを目撃した凱が、走り去って姿を消してしまう。
その頃、人間の姿にされた上に記憶を失ったラディゲ――大介(仮名)――は、早紀という少女に拾われ、ときめきエフェクトのかかった世界で、記憶も無いのにバイクでツーリングしたり、海でたわむれたりと、なんだか休暇を楽しんでいた。
大介(仮名)の記憶が戻りますように、とスミレガイに祈る早紀だが、突然、倒れてしまう。実は早紀は不治の病により、余命半年を宣告されている体だったのだ。
「何故、俺の為に祈った……何故、自分の為に祈らなかった」
「私の願いは……かないそうにないから」
「死ぬな。生きてくれ。君は、君は死んではならない人間だ。死ぬな、早紀!」
大介(仮名)が人間の為に祈ると、早紀の体を不思議な光が包み込む……。
一方、手分けして凱を探していたジェットマンでは、木の根元に横たわる凱を香が発見。
「寄るな! 死ぬ時は……独りで死にたい」
「なにを言ってるの! 死ぬなんて……諦めちゃ駄目!」
「へっ。まあそうマジになりなさんな……俺が死んでも、空は青い。地球は回る」
改めて見ると、この時点から仕込んでいたのか、恐るべし。
軽口を叩いてみせる凱だが、結晶化した男の姿を見たその内心は恐怖に満ちており、香を前にその感情が噴き出す。
「香……怖いんだ。本当はどうしようもなく。死にたくねぇ! 死にたくねぇぇっ!!!」
顔を歪めて絶叫する若松さんの演技も素晴らしいし、惚れた女の前で格好つけたいけど、同時に惚れた女には甘えたい、という男という生き物の姿が短いやり取りの中に凝縮されていて、非常に良いシーン。
形骸化しつつあったヒーロー物において、そのフォーマットを抑えながらも、結城凱という男を通して“生身の人間”を描き出そう、という『ジェットマン』の野心的試みが一つ実を結んだ、記念碑的瞬間。
放映後20年以上経っても、今なお『ジェットマン』が語り継がれる理由の一端がここにあるのだと思います。
香に抱きしめられた凱はやがてふらふらと立ち上がり、フレームの外に出ると、画面外で絶叫。香の見つめる先には――ただ巨大な結晶体が立つだけだった……。
バイラムでは、幹部達が困っていた。
「どうするつもりだお前達、このまま一生、ジューザに従っていくつもりか!」
「辛いよなぁ、それは……」
トランだけではなくグレイも嫌そうで、女帝様はなんでこんなに嫌われているのか(笑)
根本的に、仕事したくないのか。
バイラムがどんどん、自由に遊びたい駄目人間の巣窟になっているその頃、イケメン化した裏次元伯爵は、奇跡の快復を遂げたお嬢様と海の見える別荘でイチャイチャしていた。
「貴男はきっと、素晴らしい人生を送ってきたのよ。でなきゃ、神様があんな力を与えてくださるわけないもの」
見つめ合い、抱きしめ合う二人。
「もう、過去の事はどうでもいい……」
青春のときめきに流され、このままヒモとして生きる道を選ぼうとする大介(仮名)だが、順調にセミマルの卵を成長させるジューザの高笑いに共鳴するかのように、頭痛に襲われる。まるで呼ばれるようにジューザとジェットマンの戦場に辿り着いた大介(仮名)は、ジューザ、そしてレッドホークの姿を見て、記憶を取り戻す。
「我が名はラディゲ! バイラムの、幹部」
偉い人に逆らおうとしている割には、何故か配下根性が染みついた「幹部」発言に、バイラムの上下関係の厳しさが見て取れます。女帝ジューザはこれ、組織のボスというより、嫌な部活の先輩みたいな扱いか(笑)
引退した筈の嫌な先輩が帰ってきて顎で使われるようになった、という状況だと考えると、バイラム4幹部の態度が腑に落ちます。
記憶を取り戻したラディゲは、凱ばりのバイクアタックでジューザを不意打ちすると、いつもの姿に戻り、戦闘開始。その姿を早紀に目撃される。
ジェットマン撃て! ジューザの額の結晶を狙うんだ!」
ジェットマンはつい、言われた通りに一斉射撃(笑)
「今よ! 凱、私に力を貸して!」
よろめいたジューザにホワイトスワンの一撃が炸裂して結晶が両断されると、結晶化された人々が回復。怒りのジューザは魔獣化し、ブラックコンドルの代わりにジェットマンと一緒に吹っ飛ばされるラディゲ(笑) 倒れた5人に迫る魔獣ジューザだが、その時、不意の砲撃がその足を止める。
全日本もう仕事したくない連合もといバイラム3幹部が、好機とばかり駆けつけたのだ!
マリア、トラン、グレイがそれぞれ格好良くポーズを取り、なんだこの面白すぎる絵面(笑)
18話にして、敵味方が私利私欲の為に共闘するという、凄まじい飛び道具。
「貴様達まで……!」
更に復活した凱がジェットマシンから降り立ち、ブラックコンドルに変身して怒濤の連続攻撃を浴びせると、5人揃ったジェットマン、トドメのファイヤーバズーカで、女帝滅殺。まさかの前後編で仕留められて短い栄華でした……と思ったら、ぼろぼろになりながらもどこかの海岸に辿り着くジューザ。
「生まれる……生まれる、セミマルが……」
体から落ちた卵を手にするジューザだが、粘りはそこまで。現れたラディゲの剣がその喉を貫いてトドメを刺し、とうとう嫌な先輩を片付けたラディゲは、セミマルの卵を手に入れる。
が……そこへ姿を見せる早紀。
顔を見て驚いたので、休暇中の青いメモリーは覚えているらしい(笑)
「お願い! 人間に、人間に戻って! 私は知ってる……貴男は戦いなんか出来る人じゃない。貴男は優しい人。……愛を知っている人」
早紀の言葉を聞くラディゲが、鎧兜の扮装はそのまま、表に出て青く塗っている部分だけ化粧をしないで人間の肌色になる、というのは面白い心理描写。
だが……
「愛だと?! 馬鹿な。このラディゲが、そんな愚劣な感情を持つと思うのか」
ラディゲは剣を一閃し、早紀は青白い炎に包まれて消滅するのであった――。
「早く大きくなるがいい。破壊の王、究極の破壊獣よ!」
セミマルの卵からは、見た目大きめの芋虫という、セミマルの幼虫が誕生。ラディゲは密かに、恐るべき力を手に入れるのであった……。
敵キャラ増強かと思いきや、布石(セミマル)だけ置いて早々に退場という、予想外の展開。それにしてもどうして、名前は「セミマル」なのか。
ラディゲは徹底的に落ちぶれるのかと思ったら意外なイケメンパワーを発揮し、その上で、人間的感情による甘さを見せたり、いい人化のフラグが立つのではなく、交流のあった少女を惨殺する、という衝撃の展開。
ちょっと気になるのは少女が不治の病で、どのみちラディゲと会ってなければ半年の命であった事。そういう点ではラディゲの謎パワーという裏技で助けた命をラディゲが自ら処理する事で、運命は変わらないという精算をした事になっているのですが、基本的に不治の病というのは“ズルい設定”なので、作劇としてはキャラクターに「どうせ死ぬ運命」を先に与えておく事で、受け手に言い訳をしているようにも見えます。
不治の病が治ったけど結局殺されてしまう、というのも確かに悲劇性は増しますが、ズルをしてまで付加するほどの効果はなく、本当はもっと残酷な事をしたかった(病気の設定はなく単純に仲良くなった少女を殺害する)のだけど止められて、残酷さを和らげるクッションの為の設定を足したのかなーとはちょっと勘ぐってしまう所。
その上で、与えた命を取るに足らないものと見逃すのではなく、敢えて断ち切る所には、存外ラディゲの余裕のなさが覗けて、複雑な余韻を生んでもおりますが。
あと一つ注目したいのは、これまで実は、格好つけているほど格好良いシーンのなかった凱に、ラストの戦闘で大きな見せ場がある事。どちらかというと身勝手で空回りしていた凱が、死の恐怖に怯える本音を吐き出してこれ以上無く“人間”の面を見せた上で、クライマックスを戦士として格好良く締める。ヒーロー性と人間性の並立が計算して描写され、結城凱、というキャラクターが一気に成立した傑作回でした。
次回……じいやはほんと、地味に出番多いなぁ。全然記憶に無かったけど。そして予告が安定して入るようになったのは、信じていいのでしょうか。