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『ブルースワット』感想10

◆Volume12「グッドバイ・・・」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:宮下隼一)
強力な幻覚剤・ハードエンジェルが南米やヨーロッパで次々と広まるが、それはスペースマフィアが宇宙から持ち込んだスペースドラッグであった。そんな折り、かつてショウのライバルであったエクストリーム賞金稼ぎ鳥羽が帰国。鳥羽がヨーロッパ各国を転戦したルートと麻薬の拡散ルートが重なっている事に気付いたブルースワットは、ショウが山田の扮装で鳥羽と接触するが、まるで別人のような鳥羽の態度に、鳥羽がインヴェードされているという確信を強める。
エイリアンの監視装置(超露骨)を取り付けられたショウが、モールス信号で仲間と連絡を取るというそれらしいシーンが描かれるのですが、会話の合間に伝えたり、何かに偽装するわけでもなく、ひたすらモールス信号を叩きまくるので(演出としてわかりやすさを重視したのでしょうが)、それ下手するとエイリアンにそのまま解読されますよね、と物凄く台無し。
そして監視を利用して鳥羽を誘い込む作戦にも関わらず、シグとサラが何故かスワットスーツを着用せずに合流ポイントにやってくる為、更に台無し。
鳥羽役がスワット1号の中の人で、そんな鳥羽との生身アクション対決をやりたかったという映像的都合はわかるのですが、その必然が物語として成立していない為、都合の為の都合のシーンになっており、非常に冷める展開です。
鳥羽は3人をまとめてエイリアンテープでぐるぐる巻きに拘束すると時限爆弾を仕掛けて去って行き、更に鳥羽エイリアンの上役(ウイルス回などで出てきた、久子・六角とは別の男女)がブルースワットの存在を確認(した後、「あと1分30秒で爆死するからOKでしょ」と都合良く帰宅)。
あわやブルースワット最終回のその時、駆けつけたセイジが冷凍弾で時限爆弾を停止させ、ナイフで3人の拘束を破るのだが……
ショウ「馬鹿野郎! 俺たちに構うな!」
……え、セイジが来なかったら今頃3人まとめて地獄で反省中だと思うのですが。
そして、セイジ一人に鳥羽を追わせてどうするのか。
いや、妊娠回でミサイルランチャーぶっ放していましたし、セイジにも最低限の戦闘訓練はしているのかもしれませんが、その割には前回、ショウ「銃の一つぐらい撃てるようになっておけよ〜」セイジ「僕は頭脳労働担当だから」みたいな、デリケートな要素にわざわざ触れた上でギャグ扱いにして放置という頭の痛いやり取りがあったばかりなわけですが。
基本的に後方支援役なのに話の都合で車を出入りし、その割にはブルースワットの3人が最低限の訓練をつけている程度の描写があるわけでもなく、セイジに関してとにかく話の都合にいいだけの中途半端な状態を維持していたツケが出て、出来るから行く必然性も、敢えて行く盛り上がりもどちらも生まれないという、ブレーキをつけ忘れたレベルの事故に。
幸運ロールに成功し続けたセイジは鳥羽のアジトを発見して3人に連絡するが、未だ全く拘束から脱出できていなかった3人の前で冷凍弾の効果が切れ、時限爆弾が再び初めてカウントを始めてしまう。
「セイジのやつ、ミスったな!」
自 業 自 得
改めて時限爆弾が爆発する一方、セイジも鳥羽に見つかってしまい、正体を現したエイリアンに襲われるが、そこへ爆死したかと思われた3人が駆けつける(なお、爆発回避の理由は、シグの超能力レベルですらなく、一切触れず)。セイジを助けるも強力なエイリアンの攻撃にスワット1号がピンチに陥った時、憑依が解けて正気を取り戻した鳥羽が渾身のバイクアタック。だがエイリアンの反撃を受け、1号、メット割れ。ショウの素顔に気付いた鳥羽は再び1号をかばうと重傷を負いながらもエイリアンに大ダメージを与えるが倒れ、怒りのショウはエイリアンを撃破するのであった。
「あんた……誰だか知らないが、伝えてくれ。あいつに、山田に、借り、返したかったって」
ショウに抱き起こされながらの鳥羽のこの台詞は良かったのですが、メットを外したショウに対して、
「ショウ……ナルミ・ショウ、やっぱりおまえだったのか。もう一度お前と走りたかった……勝負したかったぜ、ショウ」
と、お互いに気付かない振りを通すわけではないので、あまり意味の無い事に(^^; ここは、あくまでショウに対する友情は表に出さず、山田へ借りを返すという形でショウを助ける鳥羽のひねくれた男の友情が格好いい所ではないのか(^^;
「OK、受けて立つぜ。勝負してやるぜ鳥羽! だから、だから死ぬんじゃねぇ!」
ショウの慟哭虚しく、鳥羽は息を引き取る……そして相変わらずその光景を、ドライな無表情で見つめるブルースワットのメンバーであった……。
いや、かける言葉もない、という無表情なのはわかるのですが、どうしても第1話の大惨事を思い起こしてしまいますし、前回サラが仲間の死に動揺しまくっていただけに、凄く、比較として他人事感が漂ってしまいます。悲しみを露骨に見せない戦士のシリアスさを表現したかったのでしょうが、ここで3人の顔は映さない方が良かったような。
爆発現場に作った鳥羽の墓に手を合わせ、スポーツドリンクをかけたショウは、かつての二人が並んで写った写真を、自転車と共にその墓に置いていく。
無言でスポーツドリンクをかける所など良いシーンではあるのですが、鳥羽が大事にこの写真を持っていたのかと思うと、どうにも変な笑いが出ます(^^;
いやだって、ショウは鳥羽のこと友達だと思っていなかったので、二人の写真とか持っているわけないですし! 思い出の写真みたいに捧げているけど、そもそも鳥羽の車の中にあった写真なわけですよこれ(笑)
ショウが立ち去った後、何故かそこに現れたスミレは写真を目にして二人の関係に気付くと、図書館で過去の新聞を調べてショウの前歴を知る。その流れはまずいのでは……と思ったら、スミレはとうとう、地質学研究所(元ブルースワットの隠れ蓑)の爆発事件に辿り着いてしまうのだった!
ここで、最大級の地雷を自ら爆破処理しに行くという勇気ある(或いは無謀な)一歩を踏み出すのですが、スミレが突然鳥羽の事を気にして嗅ぎ回っているという、どうにも不自然すぎる展開(^^; まあ、前回の鳥羽登場時に恐らく今回の流れまで考えていなかったのだろうと思われるのですが、例えば何かの拍子に鳥羽がスミレを助ける絡みとかちょっとでもあったなら全然違うのですけれども、すべからく、展開の為の展開、都合の為の都合になっており、実に雑。
そして、病院で少年の肉体に憑依しているマフィアの大物が姿を現し、ブルースワットの生存を遂に知ってしまう。
「抹殺しろ、抹殺しろ、抹殺しろ……」
今、ブルースワットに最大の危機が迫る!
“引いたキャラクターの再登場と死”をスプリングボードにして新展開に繋げる、というのは『特捜エクシードラフト』の反省を活かした作劇だと思うのですが、個人的には、予告の見せすぎも含め、死ぬ為に再登場させるという、キャラクターの使い方がまず好みではありません。
その上でせめて、憑依が解けた後にセイジを助けて時間を稼ぐ、とかあれば鳥羽単独の格好良さも出せたと思うのですが、強引にショウをかばって死ぬ、という道具のような使い方で、もうとにかく全編が雑のオンパレード。
前回もそうでしたが、回想シーンを突っ込んでキャラクターと人間関係を掘り下げたつもりになる、というのも典型的な悪手ですし。
また前回今回で、シグのみならずショウとサラにも、近しい人をエイリアンによって殺害される、という因縁が付加される事になったのですが、動機のわかりにくいヒーローが共感されにくいのでわかりやすい動機を設定しました、というテコ入れ臭が非常に露骨。そういうのは仕方ないとは思いますが、もう少しスマートに組み込めなかったものか。
この急ピッチの解体工事と再建作業の行き着く先はどこなのか。とにかく雑すぎて既に柱が曲がっている気がしますが、前衛的でアートな建物として完成する可能性もないとはいえないかもしれないない。
まあ思えば、『特捜ロボジャンパーソン』も14話までは目隠しして密林を全力疾走しているような作品だったので、今作もここから巧く方向性が定まってくれるかもしれませんが……『ジャンパーソン』の場合は疾走中に木にぶつかっても沼にはまってもそのまま走っていたけど(焦点を失った目)。
次回――刺客現る。