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『ブルースワット』感想35

◆Volume47「暴け!(秘)(○に秘)計画書」◆ (監督:石田秀範 脚本:扇澤延男)
とてつもなく邪悪な蠢きを超感覚で捉えるシグ、という今回も実に手を抜いた導入で暗雲漂ったのですが、
「何故だ……。準備は全て進んでいるというのに、どうしていまひとつ組織の中に緊張感が、戦意の高まりが見えないのだ!」
突然、凄く面白い事を言い出すクイーン(笑)
実質的に組織壊滅寸前なのに社員にやる気が見られないのは、みんな転職先を探しているのだと思います!
最終作戦を控えたクイーンは綱紀粛正に乗り出し、見せしめの為にぐうたら社員どもを大雑把に処刑しようとするが、部下のピンチに急ぎ駆けつけるムッシュ&でこ男&六角。更にそこへブルースワットが乱入し、命からがら逃亡に成功した2人のエイリアン、ジタンとコズマは身柄をブルースワットに拾われる。
今作ここまで、エイリアンの人格を前面に押し出すエピソードはやり方が半端であまり上手く行っていなかったのですが、今回は、まんまガンギブソンの兄貴分ジタン(CV:鳥居賞也)・恐らくエイリアン基準では美青年の気の弱い弟分コズマ(CV:関智一)が好キャスティングで、しっかり感情移入させる作劇が上手く転がりました。ジタンの方は鳥居さん前提のアテ書きだったのかも。
なお、この年『機動武闘伝Gガンダム』のドモン・カッシュで一躍名を馳せ、翌年『超力戦隊オーレンジャー』でブルドントを演じ、その後も数々の悪の組織に所属したりゴーカイチェンジしたり俺開眼したり今や東映特撮に欠かせない声優となっている関智一は、今作が特撮初参加作品との事。
「ずっと探してるんだ……落ち着ける場所を。スペースマフィアに入ったのもそうだった。どっかに、自分たちに似合いの星が見つかるんじゃないかって」
マフィアの一員だった事はさくっと水に流し、故郷を失った流れ者という2人の境遇に同情するブルースワット
「一つだけ、追っ手の来ない場所があるぜ」
スペースマフィアの裏切り者となってしまった2人に、ショウは一つの提案をする。
「いつでもないいつか。どこでもないどこか。こことは全く別の時空間だ」
「行けるの?! そんな所」
「ゴールドプラチナム、彼の力を借りれば恐らく」
ショウが急に詩的な表現で適当な事を言い出しますが、毎晩毎晩、枕元に立つプラチナムが黄金白金教の教義を唱え続けているので、こうなってしまっても仕方ないのです。許さねぇ許さねぇったら許さねぇ。
「ギブアンドテイクといくぜ」
一方的に借りを作ったまま逃げていくのは流儀に合わないと、ジタンはコズマを引っ張っり、クイーンの最終作戦の内容を手に入れる為にアジトへ潜入。そこではムッシュがクイーンを挑発していた。
「ご自慢の最終作戦を目前に、脱走者が出たとあっては、クイーンの威信も丸つぶれでないかと」
「逃げた2人は貴様の部下。万一見つからぬその時は、貴様のその首を持って始末に変える」
「なに?!」
当然の反撃をされたのに、全く予想外の逆襲を受けた表情で引きつるムッシュは、ここまでのムッシュで最高に面白かったです(笑)
嫌味を言いに言ったら首が危なくなったムッシュ一行はアジトへ忍び込んできたジタン&コズマを目にするが敢えて泳がせ、クイーンの最終作戦のデータを奪うに任せる。ジタン&コズマはその概要をブルースワットに伝えるも、詳細を秘密にしたまま作戦の進行現場へ2人で向かう……と、ブルースワット、ゲストエイリアン、クイーン、ムッシュ、の4者の状況と思惑が錯綜しているのは、今作にしては凝った展開。
まあこの後、現地であっさり合流してしまうのですが(^^;
クイーン最終作戦の阻止の為にブルースワットは出動し、ザジの面倒を見るという名目でスミレを留守番させる、というのも珍しい状況設定。何もかも今更という気はしますが、どちらかというと、気がつくとザジがアジトに転がっているのを示すシーンがここしか作れなかったのかも。
クイーンの計画とは、「マントル活性化による全地球大地震作戦」。その準備を進める海底基地の入り口を発見したブルースワットはジタン&コズマと合流するが、そこでは既にクイーンが待ち受けていた。
「いつもでない、いつか。どこでもない、どこか。そこで、明日を掴むのよ!」
クイーンに一太刀浴びせようと、ブルースワットの援護を受けながら突き進むジタンだが、親衛隊にコズマが殺害されてしまう。ショウの怒りの電波に応えてお父さんが仕送りに現れ、話が比較的まとまっている時ほど、台無し感が増すのは仕様です。
ハイパーショウの攻撃を受けてクイーン達は撤退し、海中に向けてドラムガンファイヤーを撃ったら、海底基地が大爆発(おぃ)
もはや基地へ入り込む必要も無かったという、茶番×茶番。
ジタンは花の種とコズマの死体を抱え、夢だった花いっぱいの世界を見せてやる、とプラチナムと共に時空の果てへ旅立つのであった……なおプラチナムへの具体的な夜逃げの依頼内容やプラチナムが承諾したシーンが一切描かれていないので、連れて行かれた先は、毎日16時間ベルトコンベヤーで流れてくるシルバニックギアの部品をひたすら組み立てる世界という可能性もありますが、飛ぶ前に確認しよう契約書。
「エイリアンの言葉じゃ、ジタンってどういう意味なの?」
聞かれた意味がわからないという表情のシグに、地球ではフランス語でジプシーの事、と説明するサラ。
流浪の民だね。落ち着く所を持たない者達」
「でもやっと見つけたんだ奴等は。落ち着ける場所を。……な」
その光を見送る4人の姿を描いて綺麗に落としているようで、シグの反応は当惑なのですが、あくまで地球人のセンチメンタリズムというか、エイリアンの言葉で意味を重ねるとやりすぎという判断であったのでしょうか。物語としての意味と言うより、脚本家のテーマ性が押し出されている感じが強いですし。
カメラ青年が「本当の居場所」を探しに旅立つ第7話、ロック青年が背伸びした夢を諦めて彼女と帰郷する第14話、エイリアン夫婦が「残された時間、静かに過ごせる所へ」旅立つ第31話、と今作の扇澤脚本回の約半分程度が“ここではないどこか”へ旅立つ結末なのですが、扇澤さんの中では、わざわざ地球を侵略しにくるスペースマフィアという組織自体が、“宇宙の根無し草”という位置づけであったのかもしれず、それと重ねた扇澤さんなりの通しテーマだったのかな、と。
それが今作にとって適切だったかどうか、という事についていえば、今作における全体的な扇澤脚本の切れ味の悪さを見るに、最初の入り方を失敗したのかも、という気はするのですが。
ただ、随所に『ブルースワット』らしい雑さはあるものの、ゲストの好演もあり、今作の扇澤脚本回の中では、初めて真っ当に楽しめる出来でした……『ブルースワット』基準ではありますが(^^;
エイリアンアジトではムッシュがクイーンをせせら笑っていたが、クイーンは、こんな事もあろうかと準備していたもう一つの最終作戦を高笑いと共に予告する。
次回、部下を処刑されて怒れる上司ムッシュJ、更なる改造、そして反逆!