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『ビーファイターカブト』感想14

◆第22話「轟く三味線炎の女将」◆ (監督:東條昭平 脚本:宮下隼一)
「探せ! 三味線狩りだ!」
今作における割り振り的に、浅香さんか扇澤さんだと思ったら、宮下さんまでそっちへ行くのか……!(笑)
久々にゲームセンターに出没する蘭だが、そこには凄腕の中年ゲーマーの姿が。もしや蘭を追って東京へやってきた長年の宿敵?! と思ったら、中年・刈谷文三は蘭へ向かって丁寧に頭を下げる。
「お迎えに上がりました、お嬢」
一方――
「なんですって、蘭が?!」
「三日間の休暇を? 何かあったんですか」
それはそこまで驚愕の事態なのか。
「蘭が自分から休暇を申請した事なんて無かったじゃん」
さすがブラックアカデミア。
ところかわって、とある温泉旅館――若女将として宿を取り仕切る蘭。蘭の実家は草津の温泉宿であり、蘭は番頭の刈谷の頼みで、入院した母の代理として旅館に戻ってきたのであった。
天才プログラマーでゲーム好きの現代っ子である蘭が古風な旅館の跡取りだった……という展開なのですが、あまりに淀みなく若女将業務をこなす為に、ギャップ的な面白さはこれといって無し。そして本編の狙いも、この後全く予想と違う面白さに突き進んで行く事に。
メルザードでは保護色能力と高い戦闘力を持つカメレオン怪人が誕生するが、ドードのおふざけがきっかけで、三味線の音が弱点である事が発覚。
「地上にあんな物があっては作戦に支障が!」
「おのれぇ! えぇい! おまえを苦しめる物は全て破壊する。その上で存分にビーファイターを叩け!」
兄者一行、地上の三味線を破壊して回る事に。

「メルザードが日本各地で、三味線を壊しまくってる!」
「何考えてるんだあいつら!」

ドードがいきなり三味線を取り出して弱点発覚、は強引もいい所なのですが、そこはかとなく前回の、日本日照り作戦を実行する為に人工降雨を阻止しようとする、と方向性が被っているのがおかしみを増し、何かまた、駄目な方向に面白く。
長らく、1996年の東映ヒーローは、コメディ(『激走戦隊カーレンジャー』)とコメディ(『超光戦士シャンゼリオン』)の間を王道路線(『ビーファイターカブト』)が走っているという認識だったのですが、全部コメディでしたよ!
草津温泉にまで出没したライジャとミオーラにより蘭の三味線も破壊されてしまい、満を持してカメレオン怪人が登場。兄者一行を追っていた甲平達が合流して3人はビーファイターに変身するが、カメレオン怪人の保護色はハイパービートスキャンでも見破れず、大苦戦。旅館の従業員が巻き込まれた際に偶然鳴った三味線の音色にカメレオンが苦しんだ事で、ジャミングビームによりなんとか一時撤退に成功する。
甲平と健吾にも蘭の事情が説明されるが、家業に縛られるのが嫌で実家を飛び出していた蘭は、家伝の三味線が破壊されてむしろ清々したと率直に口に出し、それを聞いた番頭は、蘭母が入院したというのは嘘だと告白。蘭母は蘭を実家に連れ戻す為に、アメリカに近代的なホテル経営を学びに行ったのであり、伝統的な旅館を守りたいと考えていた番頭は、蘭母には秘密で蘭に若女将をやってもらう事で、考え直してもらおうとしたのであった。
周囲それぞれの勝手な思惑に飛び出した蘭は、タフで強い母親と向き合えずに逃げ出したのかもしれない、とこぼし、両親が出張中の鳥羽家の事情も拾うなど、ただのアホ回ではなく、簡単に答の出せない家族それぞれの思い、という要素を入れてきたのは悪くなかったです。
「親も子もどっちも一生懸命にやってる。だから難しいんだ。でもそれだけでも素晴らしいんじゃないのかな。たとえ一緒に歩けなくても。みんな、一生懸命なんだ。あなただけだ刈谷さん、そのどっちもよく知ってるのは。番頭さんてのはそういう役目だ。私とよく似てる。はははははははは」
似てないよ。
前回今回と明らかに、小山内博士の軌道修正がはかられているのですが、見るからに年長な番頭に対する口調といい、間を持って取りなすのかと思いきや自分を持ち上げる所といい、根本的な人間味の薄さが隠しきれません。
ビットの調査により、三味線の音色の波長がカメレオン怪人の弱点だと判明するが、既に日本中の三味線は破壊し尽くされている! 対応策を練る前に、街に出現して破壊活動を始める兄者一行。
「戦え! ビーファイター。街がどうなってもいいのか」
「この地上に三味線がなくなった今、ガメレオーダは無敵。倒せるものなら倒してみろ!」
カブトンとクワガーが立ち向かうもカメレオンの戦闘力に追い詰められたその時、実家の蔵の奥から母親が大事に取っておいてくれた三味線を見つけた蘭が、炎の女将として推参。華麗なバチ捌きでカメレオンを苦しめると大爆発に追い込み、テントウスピアーでフィニッシュ。かくしてメルザードの、三味線全滅計画……じゃなかった、ビーファイター抹殺計画は失敗に終わるのであった。
「ごめんなさい、刈谷。私、今の仕事に誇りを持ってるの。今、はっきりわかった」
蘭は改めて旅館を継げないと自分の道を進む事をハッキリさせるが、アメリカの母からは「旅館は続けるので今の仕事を頑張れ」とメッセージが届き、実は博士が蘭母を説得していたのでした、で博士に人情味を見せてオチ。
…………これ、空気読まずにビットが博士の裏工作を明かしてしまった、みたいに描かれているのですが、いいタイミングで種明かしをするように博士がビットをプログラミングしておいたが真相だと思います!
今作で鬼門になっている東條×宮下コンビかつ、危なげなサブタイトルという事で期待しないで見たのですが、前回よりよほど面白く、『ビーファイターカブト』は本当に、どこへ進もうとしているのか(^^;
面白いに越した事は無いのですが、作品全体としては、面白さが物語としての積み重ねとあまり関係ない、ネタの瞬発力勝負になっているのは気になる部分。
前作が昆虫魂とか多次元世界とかの設定面をかなり押し出す作風だったので、2年続けて同じ事をやるのを避けているというのはあるのかもしれませんが、それにしても世界観へのこだわりが薄すぎる気がして、夏休み明けにシリアスな新展開が来るのか、だんだん不安になってきました!
次回――
「人はいつか、自分一人で歩いていかなければならないんだ。ひとりぼっちで荒野に。自分自身に誇りを持て。男の生き方、俺が見せてやる!」
予告の甲平モノローグがやたら格好良くて、不安(え)