◆Task.13「かぐや姫の宝」◆ (監督:坂本太郎 脚本:大和屋暁)
『かぐや姫』の物語の中で、姫が求婚者達に求めたと語り伝えられる宝物が、次々と盗まれる事件が発生。そして、最後の一つ<燕の子安貝>をどちらが手に入れるか勝負しよう、という大胆不敵な挑戦状が、怪盗セレネーを名乗る人物からボウケンジャーへ送りつけられる。
「よほど自信があるらしいな。……ふっ、面白い」
怪盗とお宝を巡って争う、という待望のシチュエーションに盛り上がりすぎて、チーフが人を殺しそうな目に(笑)
かぐや姫の宝物一つ一つは危険なプレシャスというわけではないが、怪盗セレネーの真意を確かめる意味も含めて、挑戦状に応えたボウケンジャーは<燕の子安貝>が眠る洞穴へ。だがそこで、同じくかぐや姫の宝物である<竜の頸の玉>を巡って謎の美女と揉めていたジャリュウ一族と鉢合わせし、ぶつかり合う羽目に。
宿敵ボウケンレッドへの度重なる敗北を糧に密かに修行を積んでいたのか、今回から陛下が怪人ポジションの邪悪竜を召喚できるようになり、ジャリュウ一族が戦力アップ。
「ボウケンジャー、道案内ご苦労様」
そこへ、先にジャリュウ一族を蒼太と菜月に押しつけた謎の美女――怪盗セレネーが姿を見せ、悠々と洞穴の中へ。後を追いかけたブルーはセレネーが解けずに苦労していた謎掛けをあっさり解除してみせるが、迂闊に子安貝を手に取った事からトラップが発動してしまう。激しい地響きが洞窟を揺らし、これを見た邪悪竜(なおこの戦闘で、ハイドロシューター使用!)は、洞窟へ突入すると自ら生き埋めになる、驚愕の自爆(笑)
陛下! 陛下! 怪人ポジションの知力が、某ブラックサタンばりですよ!!
「蒼太さんは?!」
「大丈夫だ。あいつはこの程度でくたばらない」
部下への篤い信頼は良いのですが、なぜチーフは、イエローの肩ポンしますか?
セクハラポイントが5P溜まるごとに、さくらさんのお仕置き装備が強化されますよ!!
LV1:素手
LV2:ベレッタ92F
LV3:74式車載機関銃
LV4:USMk47Mod0オートマチック・グレネード・ランチャー
LV5:デュアルクラッシャー
洞穴のブルーは、ジャイロナックルを使って華麗に脱出。セレネーをナンパもとい事情を聞こうとするもすげなく拒否されると、お近づきのしるしにと子安貝をあっさり渡してしまう。
「…………どうして?」
「美人の悲しむ顔は、見たくないから、かな」
セレネーは子安貝を持ち去り、しれっと基地に戻った蒼太は一斉に非難を浴びるが、相変わらず人を殺しそうな視線の不滅の牙だけは、違った態度を見せる。
「……言ってみろよ。女を泳がせた理由」
「さすが。チーフの目だけは、誤魔化せなかったみたいですね」
一つ一つでは強い力を持たない五つの宝物――その正体は、『かぐや姫』の物語に出てくる最後の秘宝への鍵ではないか、という推察を蒼太は披露。それは月に帰る姫が竹取の翁に残した不死の薬であり……悲しみに沈む翁が薬を燃やした場所は、富士山。蒼太の推測通りに富士の樹海に入り込んでいたセレネーは、宝物が姿を変えた勾玉を用いて、かなり壮大なカット割りとBGMで秘宝へと辿り着く。
だがそこに、知力は足りないが生命力は高かった邪悪竜が姿を見せ、財宝の入っていた箱を強奪。ところがその中身はただの灰で、怒った邪悪竜はセレネーに襲いかかるが、間一髪で飛んでくる蒼太。
「所詮トカゲか。レディのエスコートが、なってないな」
その後にぞろぞろとやってきた何だか感じ悪い人達が揃って変身し、フル名乗りから戦闘へ。戦いの最中、邪悪竜に狙われたセレネーをまたも助けるボウケンブルー。
「どうして?! どうしてあたしを助けるの?! あたしは貴方たちを騙して、利用してきたのよ! それなのにどうして?」
「言ったろ。君みたいな美人が、悲しむ顔は見たくないって」
……今回、どうも見ていてしっくり来なかったのですが、この台詞で違和感の正体に納得。
従来作のセオリーに則り、自分の欲望の為にボウケンジャーを利用した相手でも、ヒーローは土壇場でその身を助け、それによってゲストが改心する、というクライマックスの集約点としてこの台詞が置かれているのですが、今作では、ボウケンジャー(サージェス)の方が、遠回しな脅迫とか間接的な強奪とか、よほど後ろ暗い事を繰り返しているので、ゲストが全然悪く見えません(笑)
加えて今回だけでも、セレネーは泳がされた上で囮に使われているわけで、助けられたというより、むしろ、利用され返されています。
そして、第11話までで組み立てたられた今作の特徴とは、その「どっちもどっち」である事をむしろ自分達から積極的に明らかにしていくストロングスタイルなので、美しい誤解をそのままにして改心を描いてしまうというのが、『ボウケンジャー』らしくない作りになってしまいました。
蒼太はその美しい誤解をナンパに利用しているわけですが、今作のスタイルで言えば、真墨にツッコミを入れさせるか、チーフがぽろっと口を滑らせて、何もかも台無しにする所までやってこそ『ボウケンジャー』の面白さになるのかな、と。
初参加となった、坂本太郎×大和屋暁が、少々、いつも通りに作りすぎてしまった感。
大和屋さんからすると、勇気が魔法で無限のパワーだった前作の途中参加から一転、欲望と闇の力と冒険への狂気が入り乱れる『ボウケンジャー』世界がすんなり掴めなかったのかもですが(^^;
趣味の園芸で育てている花をセレネーに差し出した青は、個人回の持ち回りという事らしいコンクリート&ドリルでドラゴン兵を粉砕。……思えば前回、ピンクはコンクリートで動きを封じる手間を置かずにドリルで一撃必殺しており、改めて溢れ出す修羅の魂を感じます。
これにて一件落着かと思われたその時、地面に倒れたドラゴンが灰に触れると未知の力がその体に宿り、なんと巨大化。タウリン全開のドラゴンによる、尻尾から電流を流す湖の秘密攻撃で追い詰められるダイボウケンだったが、ジャイロの単独離脱から強襲で作った隙に、超轟轟合体。本日もさっくりと、巨大な敵を引きずり潰してミッションコンプリート。
地面にばらまかれてしまった灰はセレネーが首飾りをかざすと拳大の結晶体となり、その正体は不死の薬、ならぬ超凄い滋養強壮剤。
「運命に感謝してるわ。どうもありがとう。それじゃ」
蒼太にそっと言い残し、結晶をサージェスへ託した怪盗セレネー――月の女神を名乗る女――は竹藪の中を走り去っていく……。
「あ、君!」
「なによ。でれでれしちゃってさ」
「でも不思議だよな。彼女はいったい……」
「何者、だったんだろうな?」
「……かぐや姫」
「「「「え?」」」」
「だったりしてね」
最後は、十二単姿で月を見つめる女が虚空へ浮かび上がり……というファンタジックなオチで、つづく。
前身は国際的スパイであり、高い情報収集力に運動能力、総合的にはかなり優れたスペックを持ちながら、全方位によりキレたチーフとサブチーフが上に居る為に、すっかり年下組のフォロー役が板に付いていた蒼太さん回。
女好き設定を活用して女性ゲストと絡める、というプロットでしたが、「女好きのお陰で得た思わぬヒントが逆転に繋がる」や「女好きが原因で犯したミスを挽回する」ではなく、「粉は掛けてみたけど最初から最後までミッションを優先している」というのが、どうも中途半端になってしまったな、と(^^;
真墨や菜月は迂闊なミスを描いてもそこまでボウケンジャーの“プロらしさ”を傷つけませんし、チーフとさくらは問題行動を火力で粉砕可能なのですが、蒼太をどちら側に位置づけるかで、女好きやスリルジャンキーの一線を越えた壊れ方を描かずに、随所に優秀さを見せつつとりあえず現状維持にしてしまった感があり、現状、チーム内の中間管理職である蒼太の位置づけのちょっとした難しさを感じます。
そして、前身が前身だけに習性として身についているのかもしれませんが、“綺麗な女性に声をかけるのがマナーだと思っているが、踏み込むつもりは全くない”という蒼太、凄くタチの悪い男説が私の中でますます濃厚になってしまいました(笑)
蒼太、相手が本気になったら、戸籍ごと消して行方をくらましそう(おぃ)