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『轟轟戦隊ボウケンジャー』感想・第14話

◆Task.14「甦る過去」◆ (監督:坂本太郎 脚本:荒川稔久
 『忍風戦隊ハリケンジャー』(2002)から5年連続、戦隊シリーズとしては『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)を皮切りに実に12作目となる荒川さんが参戦。
 ローラースケートを履いた菜月のドジでココアを浴びせられた真墨、前々回に続いて、ジャケットパージで二の腕を披露。
 「やると思いました。登場の瞬間から!」
 「真墨おまえ、よく菜月とコンビ組む気になったな?」
 開始早々、身内に辛辣なチーフとサブチーフ。
 「あ〜、ひどい。でも、そういやどうして仲間にしたの?」
 「え? ……知るかよ!」
 「あ、なんか誤魔化してる」
 「誤魔化してないって!」
 と言いつつ目を逸らす、わかりやすい真墨。
 「あ! もしかして、菜月が、可愛いから?」
 「えぇ……?」
 にっこり微笑む菜月に、何言ってんのおまえみたいな顔になる真墨だが、そこへボイスから、新たなプレシャスの情報がもたらされる。草薙剣の原料になったと言われる伝説のエネルギー鉱石を回収する為に、ある山へアタックを仕掛ける5人の前に立ちはだかったのは、闇のヤイバと風のシズカ、そしてゴードム傭兵派遣会社の社員達。
 「嗅ぎつけるのが早いな、サージェスの犬どもめ」
 サージェスなら、ダークシャドウの出入り業者にスパイを仕込んでいるぐらいの事はしていそうな気がします。
 いきなりの遭遇戦のさなか、ヤイバとシズカの集中攻撃を受けた菜月が川に落下。4人とはぐれ、通信も不能になってしまった菜月は、森の中で何故か木に縛りつけられていた少女を発見する。
 「……お姉ちゃん? ユリアお姉ちゃん! 会いたかった……! やっと……やっと会えた……」
 助けた少女は意識を取り戻すとやおら菜月に抱きついて涙をこぼし、衝撃の発言。
 「あの……どういう事? 私が、お姉さん?」
 「覚えてないの? 私よ! 妹のミリア!」
 「ミリア? ……あたしは?」
 「お姉ちゃんはユリア!」
 菜月の妹を名乗る少女は、菜月の過去――菜月が秘宝を感知する力を持っている事、その力を利用して家族4人で超古代の秘宝が埋もれているという遺跡を探索していた事、そこに菜月の力を狙う悪漢が現れた事、悪漢に両親が殺されてしまった事、菜月はさらわれ恐らくその時のショックで記憶を失ってしまった事――を語る。
 ミリアは姉の足跡を追う為にトレジャーハンターとなって世界中を駆け巡り、両親を殺して菜月をさらった憎き仇こそ、伊能真墨!
 「嘘……真墨が……?」
 「嘘じゃない。助けたフリをしていたのよ。お姉ちゃんの力を、利用する為に」
 遺跡を訪れた4人家族の服装がどう見ても近所にショッピングで、(恐らく意図的に)捏造感はなはだしい回想なのですが、闇の力でいっぱいの真墨がけっこう格好いい(笑) なんだか、理想のオレ像を感じます。
 自分を仲間にした理由を語らず言葉を濁した真墨の態度を思い出し、不審を強めつつも真墨を信じようとする菜月だったが、ミリアが同じ腕輪を身につけている事を目に留めると、その言葉を信じる事に。
 菜月の翻意がやや急なのですが、この後で明かされるミリア(の正体)の能力を考えると、回想シーンは、ミリアの語りと同時に菜月の脳裏に甦った(と思わされた)記憶の映像、という事でしょうか。話とセットで映像が見えていた、と考えると菜月の心の動きにも納得できるのですが、演出からはわかりにくかった部分。
 ミリアから腕輪を渡された菜月は、促されるままに第六感の導きに従い、プレシャスが眠る洞穴の前でボウケンジャーと衝突。
 「馬鹿言うな! おまえ、騙されてるんだよ! 目ぇ醒ませ!」
 服装を筆頭に色々と嘘っぽい回想シーンなのですが、一番の証拠品は、色々な意味で真墨にそんな度胸はなさそう、というのが(笑)
 真墨だけではなくボウケンジャーも菜月の力を利用しようとする悪の集団だ、とミリアにそそのかされた菜月はイエローに変身。二つ目の腕輪は菜月の力を憎しみで増幅しており、ハイパーイエローに苦戦するボウケンジャーは、洞穴の入り口を塞いで一時撤退。
 自分たちが近付けないとなると、あっさり崖崩れ起こすのが、凄くボウケンジャーです。
 「いくら同じ腕輪をしていたからって、そんなに簡単に信じられるものでしょうか?」
 「それほど深い傷なんだ。……アイツの中で」
 「いずれにせよ、今の菜月はプレシャス回収の妨害因子だ。どうする? 真墨」
 「元に戻すに決まってんだろ。あいつはもう、ボウケンジャーの菜月なんだ」
 キャンプシーンが冒険の彩りとして良いアクセントになり、ずばっと言い切る真墨も格好良い。一方、姉妹?は仲良く野宿しており、ミリアは横で眠る菜月に親身な様子を見せていた。色々と胡散臭いながらもここまで、姉を心配する妹の姿を貫かせたのは、エピソードの緊張感を高めて良かったです。
 菜月は眠りの中で、川で溺れそうになった所を真墨に引っ張り上げられ、暖かなお手製ココアをご馳走になった過去を夢見ており……
 「そんな甘い夢は見なくていい」
 だが菜月の様子を気にしていたのは夢を読み取る為だったらしいミリアの様子が豹変、DS妖怪の正体を現す。
 「へへ、おまえの見るべき夢は、これだ!」
 妖怪は左手のカメラのようなものを向けると、菜月の夢の中身を加工……てこれ、ドリームマシン?! 『特救指令ソルブレイン』第13話に、夢を加工し更にそれを録画するというトンデモアイテムが出てくるのですが、やはり『ボウケンジャー』宇宙は《レスキューポリス》宇宙と部分的に交わっているのか……! 平行世界の跳躍者であるところの正木本部長(またある時は三浦参謀長)がサージェス財団を設立したのだと思うと、そのどす黒さにも全て辻褄が(え)
 与太はさておき、加工された夢の中では、闇の翼を翻した真墨が、切れ味鋭くココアを川へ投げ捨てる。
 「これだから……ガキは扱いやすいぜ。おまえの力、たっぷり利用させてもらう。できなきゃ、両親の後を追わせるまでさ。ふ、はは、ひゃはは!」
 凄く楽しそうなダーク真墨ですが、得意の絶頂で高笑いしている時に不意を打たれて逆に銃を向けられる所に物凄くリアリティがあって素晴らしい(笑)
 「パパとママの、仇……」
 「それでいい。おまえはもうダークシャドウの仲間だ」
 粘土×8ミリベストマッチ妖怪の能力見せも含めて、この一押しで、全体の説得力がぐっと上がったのは秀逸。第12話〜の流れには、今作1クール目の不足要素だった、「怪人」を強化する意図も見える所です。
 翌日、プレシャスに辿り着く別ルートを探す菜月とミリアを尾行したボウケンジャーは、第二の腕輪から妖怪の成分を感知し、背後にダークシャドウの陰謀がある事を確信。
 「もうあなたには利用されない」
 真墨は直球で《説得》を試みるも、いっそう暗示の強化された菜月にアクセルラーを構えられるが、切々とこれまでの日々を訴えかける。
 「なに言ってんだよ! 今まで俺が、おまえを利用した事なんてあったかよ?! 助けられたり、助けたり。色々あって、ここまで来たんじゃないか。俺のココアが気に入って、今じゃおまえの方が美味くなった。それぐらい、一緒に居るんだぞ」
 「でも……だったら、だったらあたしを仲間にしたのはどうして?!」
 迷える菜月の反問に、先ほどまでの勢いはどこへやら、言葉に詰まった真墨は再び目を泳がす。
 「それは……おまえこそ本当の気持ちはどうなんだよ?!」
 あ、ヘタレた(笑)
 「本気で思ってるなら、変身して俺をぶっ飛ばせよ。変身して……サバイバスターでここを撃て!」
 しかし土俵際で踏みとどまった真墨は、ジャケット半脱ぎで胸板を見せつけ、不滅の牙と闇のヤイバ先輩に立ち向かう為、そういう路線に行くのか(待て)
 「真墨……あたし……」
 真墨の命がけの《説得》に戸惑う菜月を背後からミリアが煽り立て、そのタイミングを突いてミリアの正体はDS妖怪である、と告げるさくら。真墨が情に訴えかけて心の隙間を掘り返した所に、菜月からの信頼度が真墨に次いで高いさくらが幻想を揺るがす、という高度な連係プレー(真墨は無自覚、さくらは多分狙っていた)がクリティカル成功するが、方針変更した妖怪変化は自らその正体を明かすと、偽の腕輪を使った忍法で暗示を更に強化してしまう。
 完全に洗脳された菜月はイエローに変身すると真墨とボウケンジャーへと襲いかかり、妖怪はその間に洞穴へ。洗脳の鍵となっている腕輪だけを破壊しようとする4人は暴走状態のイエローに苦戦し、チーフはやむを得ず一斉射撃で気絶させる指示を出す。だがそれを制したブラックはイエローの銃撃を浴びながらも単身突撃し、変身解除級のダメージを受けながらも、まさかの生身ハグ。
 運命の仲間が偽りの前世の記憶に惑わされて刃を向けてくる、という夢のようなシチュエーションに、真墨の中の闇の力が、今、爆発寸前!!
 「いいか、よく聞け! 俺が、俺がおまえを仲間にしたのは――」
 もぎ離されそうになりながらも、菜月を取り戻す為、真墨は全力で抱きしめて叫ぶ。
 「おまえが、おまえが、可愛かったからだ!!」
 「え……」
 「うっそ」
 「言ってしまいました、ね」
 チーフはたぶん真顔で、(熱い冒険魂の共鳴を感じたからじゃないのか……?!)とか考えている。
 衝撃の告白に菜月が固まっている内に、腕輪の破壊に成功。正気を取り戻した菜月は駄々をこねるように真墨の胸が叩くが、そこにプレシャス抱えて出てくる粘土妖怪。
 こりゃまたお呼びでない、と逃げ出そうとした所を改めて変身した黒黄が追いかけ、忍法風景変化で魔空空間されるも、コンビ攻撃から、黄がデュアルクラッシャーを使用。プレシャスを取り戻すも巨大化した妖怪に対して、今回は最初から超轟轟。
 4回目の登場となった超ダイボウケンですが、現在キャンペーン期間中にしても、敵の攻撃が一切通用しなくてホント無慈悲。
 自慢の粘土爆弾が通用しない事を悟った妖怪は、一度物陰に隠れると何を思ったのか巨大な真墨に変化。
 「へへーん、この姿なら、思うように攻撃できまい。はははははは」
 「そんなおっきいの、真墨じゃないもん! やっちゃえやっちゃえ!」
 だがボウケンジャーは、身内には厳しめの戦隊だった。
 「……えぇ?」
 約一名の否定的反応を無視して主題歌まで流れ始め、巨大真墨にボウケン頭突きが炸裂。派手に吹き飛んだ巨大真墨が妖怪の姿に戻った所を轢き殺し、これにてミッションコンプリート。
 当人がロボットに同乗している以上、通用する訳が無いにしてもホントに一切躊躇せずに大技を決めに行くのが、凄くボウケンジャーらしくて良かったです(笑) ……これでも真墨の姿のままコンクリートで固めてからドリル打ち込まなかった分、財団の世間体には配慮した!
 プレシャスは確保、菜月も元に戻り、八方丸く収まって後日――冒頭と同じくローラースケートで滑りながら、休憩室に豪華なホールケーキを持ってくる菜月だが、姿が見えない約一名、
 「めちゃめちゃ恥ずかしい事言ったんで、自己嫌悪だって」
 は部屋の隅で頭を抱えて素数を数えていた。
 「なーんだ、そんなこと気にしてんの? らしくないよ、真墨」
 「うるせぇ! 言っとくけどな、ホントはおまえにどうこうっつぅ気はねぇからな! 気の迷いであんな事言っちまったけど、深い意味は! ぬぁぁぁぁぁ!!」
 以前と変わらぬ気楽な様子で接してくる菜月を避けながら、頭をかきむしる真墨(笑)
 「はいはい、わかってるよ」
 満更でもない様子を見せるでも、何かアプローチをしてくるわけでもなく、本気だったらアタックしてみたらチャンスはあるかもよー?的に余裕を見せて受けに回る菜月に軽くあしらわれるのが、ますます憐れ(笑)
 「うわぁもう、なにかなにを言っても、泥沼……」
 膝を抱えて再び素数を数え始める真墨のMPはもう0だ!
 「菜月、おまえの明るくくじけない性格は、ボウケンジャーに必要不可欠だ」
 MP余り気味のチーフは、折角なので必殺《俺は既にいい事を言った! このボウケン(びしっ)レッドが!》。
 「チーフ……。……決めた! 菜月、もう腕輪のこと気にしない。だって、記憶があろうとなかろうと、菜月は菜月で居たいから」
 腕輪に目をやった菜月は、今の自分――トレジャーハンター間宮菜月――、今の仲間達との関係性を肯定。過去の欠落を抱える菜月の現在を認めて改めてその居場所を約束し、チーフが珍しく、凄く真っ当にいい事を言いました(笑)
 過去からの眩惑を乗り越え、一つ強くなった菜月の姿に真墨も朦朧状態から立ち上がり、さあお楽しみだというところで転んだ菜月がケーキに顔面ダイブするオチで、つづく。
 これまで割とふわっとしていた、真墨と菜月のトレジャーハンター時代と、2人の関係性にスポットを当てて穴埋め。また、菜月の《獣の勘》と記憶喪失について印象が薄くならない内に拾っておき、お気楽だけど根の深いところで自己喪失に苦しむ菜月が、今大事なものの為に過去に振り回される事を止めて前進を選ぶ、という形でその2点を時機が来るまで放置OKのフォルダに収納しておく、という至れり尽くせりのエピソード。
 ラブコメの種も播く、シリーズ構成も助ける、両方やってこそ煩悩とスキルのハイレベルな融合! という荒川さんらしい一本でした。
 真墨があまりにも直球な青春メッセージを叫んだ時は一瞬どうしようかと思ったのですが、その後も手を緩めずに真墨を面白くし続けた結果、伊能真墨だから仕方ない、みたいな領域に。
 “デュアルクラッシャーが回ってこない”のも含めて、カテゴリでいうと、〔残念〕とか〔へたれ〕とか〔二枚目半〕を越えて、〔橘さん〕が近づいてきました。
 もともと真墨は崩しやすいキャラではあるのですが、ジャケットを脱ぐ真墨、闇の力一直線の真墨、真摯な説得を試みる真墨、青春を叫ぶ真墨、ダイボウケンに吹き飛ばされる真墨、いっそ引きこもりたい真墨、狂乱する真墨、と幻覚込みで様々な演技の引き出しを詰め込んだのも良かったです。
 そして今回わかった事は、第1話で不滅の牙を出し抜いてやったぜ!の直後に、菜月が「どちらかというと、この機会に正社員になりたい」と言い出したのは、真墨にとって物凄くショック案件だったのだな、と(笑)
 それでもくじけず、第2話以降、真墨が存外真面目にボウケンジャー活動に勤しんでいたのは、自分の居場所を求める菜月への優しさがあったのだと思うと、見えない所でいい男成分も上昇して参りました。
 だからこそ、「あいつはもう、ボウケンジャーの菜月なんだ」であり、それはまた、「俺はもう、ボウケンジャーの伊能真墨なんだ」という事でもあり、真墨が探している何か(チーフ曰く「光」)もそこにあるのかもしれない、という多重な意味づけの填め込み方は荒川さんがさすがテクニカル。
 真墨の叫んだ「助けられたり、助けたり」という菜月の存在は、真墨にとって切実な救いであったのかもしれません。
 前年『マジレンジャー』では中盤に良エピソードを書きつつも、レジェンドマジレンジャー大惨事のインパクトがあまりに強かった荒川さんですが、まずは及第点の出来で、ホッと一安心。
 菜月のヒロイン度が上昇する10倍ぐらい、真墨が面白くなってしまったのは、事故。