ドタバタをくぐり抜けて、ようやく小説の内容が頭に入ってくるようになってきた今日この頃。しかし2作ともいまいちだったのであった……。
◇『温かな手』 (石持浅海)
人間の生命力を吸収する人間そっくりの生命体ギンちゃんと共生関係にある主人公は職場で殺人事件に巻き込まれるが、ギンちゃんが優れた頭脳で事件を解決し……と、人間のようで人間でない生き物が探偵役を務める、石持さんらしい奇抜の設定の短編集。
なのですが、探偵役が人間とは別の生命体である、という要素が、つとめて冷静かつ客観的に物事を見られる(つまり探偵「役」としての説得力)というだけで、フィクションにおける“探偵としての説得力”に繋がっていない為、ただの頭のいい人になってしまっており、設定と物語の噛み合わせがパンチ不足。
謎解きもこれといって、ならではの解決に着地するわけでなく、いまいち。
◇『梟のシェスタ』 (伊予原新)
身に覚えのないアカデミック・ハラスメントの訴えを出された国立大学講師の吉川は、犬猿の仲の上司であり、実際にアカハラを繰り返している首藤教授を糾弾できない事情から窮地に陥ってしまう。ハラスメント相談員である新任の袋井准教授にも冷たくあしらわれる吉川だが、背後には学長選挙をめぐるきな臭い動きがあって……?
衰退の中で生き残りにあがく地方の国立大学を舞台に、自分の置かれた状況に不満を覚えつつもその時々の保身に汲々とする吉川が、昼夜逆転した胡散臭い准教授・袋井に振り回される連作ミステリ。
大学という舞台設定とそこで起きるトラブルには新鮮みがあって面白かったのですが、主人公といえる吉川があまりにも狂言回しにすぎて、個人的な好みに合わず。