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ナツイチのシフト

今年も「夏の100冊」の季節がやってきて、書店は文庫のフェアで花盛り。
そんな中、3年前? 『人間失格』を小畑健書き下ろしによる新カバーで売り出して注目と実売を上げた集英社文庫、去年はそれに加えて『地獄変』『こころ』(共に小畑健)、『伊豆の踊子』(荒木飛呂彦)を新カバーでフェアに組み込みましたが、今年は
地獄変』『堕落論』(久保帯人)・『走れメロス』(許斐剛
がラインナップ。
去年までが、“人気漫画家”であるのは勿論としても、一般的に“画”として通用する作家を起用していたのに対し、今年は(上手い下手とはまた別の話で)明らかに“少年漫画”な絵柄、それも、若い女性に人気があると実証されている作家、を使ってきたのはなかなか興味深いです。
非常に単純に言ってしまえば、「若い子に文学を表紙買いさせる方向」に明確にシフトしてきました。
勿論、ここ2年あまりの評判とか売り上げデータを参考にした上で、そういったプランを立ててきたのでしょうが、今年これが成功するようだと、更にこういった方向性は加速する……のかな? 表紙の刷り直しとかコスト面を考えると、どのぐらいで利益を出せる計算になっているのかなど、わからない要素があるので、断言は差し控えます。
しかしまあその内、マンガ絵表紙で挿し絵付きの名作文学シリーズとかも出るかもしれません。
普通に読みたければ、新潮文庫で買えばいいわけですし(笑)
……面白い傾向で、こういった各社から出ているような文学作品は、大概、新潮社のが一番売れます。まあ、棚の占有率などもありますが、例えば『こころ』は手に入りやすい所で、新潮・角川・集英社と出ていますが、やはり新潮社が強い。
逆に、他社が表紙で独自色を出していこうとすればするほど、ごく普通の新潮社が自然とそれはそれで独自のポジションを築く事になっているのは面白い。
人間失格』なんかは、集英社がかなり売りのばしはしましたが。最近は角川も、松山ケンイチの表紙などで、色々と頑張っていたり。
ちなみにこういった名作文学リプレースは近年盛んになってきていまして、幾つかの作品はケータイ小説風に横書きにして発刊されたり、今年はどこかの会社(忘れた)から、そういった世代向けに、アイドルの写真を表紙としたものが発行されたりしています。
著作権の問題などもあって選択肢はそれほど広くはないのかもしれませんが、大体どれも『こころ』と『人間失格』が入っているのはご愛敬。アイドル表紙のシリーズは珍しく、『風立ちぬ』が入っていましたが。
そして夏になるといつも、そういえば『こころ』は読んでないなぁ……と思うのでありました。