はてなダイアリーのサービス終了にともなう、旧「ものかきの繰り言」の記事保管用ブログ。また、旧ダイアリー記事にアクセスされた場合、こちらにリダイレクトされています。旧ダイアリーからインポートしたそのままの状態の為、過去記事は読みやすいように徐々に手直し予定。
 現在活動中のブログはこちら→ 〔ものかきの繰り言2023〕
 特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)

『特捜ロボジャンパーソン』感想16

◆第19話「怪盗!電送魔女」◆ (監督:小西通雄 脚本:増田貴彦)
サブタイトルからして、往年の東宝特撮<変身人間>シリーズより、『電送人間』を思い出させる今回。
黒猫のぬいぐるみの瞳から、警戒厳重な美術館の内部に電送される、全身ヒョウ柄タイツの女怪盗パンサーレディ……と、円谷っぽいというか怪奇大作戦』っぽい入り(笑)
(『怪奇大作戦』はもっと陰鬱としていますが)
ピンと立った尻尾がお洒落なパンサーレディの主な武器は、優れた体術と電磁ムチ。警備員達を次々と気絶させてブルーダイヤを盗み出すとカードを残し、その場に設置した猫の瞳を用いて、電送により脱出する。
各地の美術館などでブルーダイヤを専門に盗み続けるパンサーレディの真の目的は、ブルーダイヤの特性を活かして電送装置を強化する事。それにより、同時に大量の人間や武器を電送可能にし、国の中枢機関にバイオ兵士を電送して政府を制圧しようとする、スーパーサイエンスネットワークの恐るべき計画の為であった。
麗子様、初めての女性部下。
そしてどちらかといえばせせこましかった、というか、愉快犯になりつつあったSSN、はじめての大規模作戦の暗示。
初登場時の台詞も確認してみましたが(「科学こそが全ての存在の頭上に君臨すべき哲学なのよ。それを証明し、世界を我が手にする為には、 どうやらあたなが邪魔になりそうだわ」)、一応、真面目に世界征服する気があった。
志は、高く。
パンサーレディの次なる目的は、エジプト博物館のブルーダイヤの王冠。天井からの電送により瞬間的に現れたパンサーレディの手が王冠に伸びたその時、風を切るJPカード!
「ジャンパーソン・フォー・ジャスティス!」
明らかに敵用に造った曲だろうこれ、というBGMと共に、ラスボス参上。
色々あったけどやっぱり……
俺が正義だ!!
前の事件で猫の瞳が電送装置の端末である事をサーチしていたジャンパーソンは、天井の装置を破壊し、パンサーレディと野外での格闘戦にもつれこむ。パンサーレディを追い詰めたジャンパーソンだったが、なんとパンサーレディ、予備の瞳をジャンパーソンの体に貼り付けると、ジャンパーソンの中へと入り込む!
パンサーレディは電送人間であり、電気信号と化してコンピューターにも潜入できるのだ!
内部から攻撃する、というオーソドックスな強敵撃破パターンを繰り出され、電子機器を傷つけられ苦しむジャンパーソン。そこにパンサーレディ事件を担当する刑事、関町と高瀬が駆けつける。自分の行動を制御しきれないジャンパーソンは、「頼む、この胸の端末を打ち落としてくれ!」と他人の助力を仰ぐ、というひじょーーーに珍しい展開。
構成としてはJPさんの 黒幕 協力者として三枝かおるが登場したので、ジャンパーソンと他の人間との協力関係を自然に見せる為に、その範囲を広げてフレキシブルに見せよう、という事でしょうが。
端末を撃ち落とそうとする刑事コンビだが、年嵩の刑事・関町は、どうしても引き金を引く事ができない。警視庁一の射撃の名手と言われていた関町だったが、2年前にある立てこもり事件の際に人質にされた少女を誤射してしまって以来、拳銃が撃てなくなっていたのだ。
この前に、関町がリハビリセンターに車椅子の少女・里美を見舞いに行くというシーンがあるのですが、記号的になってしまうネタを、ゲスト刑事のトラウマと結びつけ、それをゲスト怪人への対策に繋げる、とうまく物語に組み込みました。
銃を撃てない関町に代わり、若手刑事の高瀬が射撃を試みるが、暴れ回るジャンパーソンに命中させる事が出来ない。仕方がないのでジャンパーソン、バックレットコントローラを操作してスカイジイカーを呼び出し、自らに機銃の雨を降らせる。
ラスボス、格好いいーーー!!!
今作は、こういう無茶アクションこそ、らしくて輝きます。
ジャンパーソン捨て身の作戦に電送装置は破壊され、JP内部から追い出されたパンサーレディは逃亡。ジャンパーソンは逃げるパンサーレディの服の一部を奪う事に成功し、タイツの切れ端を手に、わなわなと拳を振るわせながら関町に迫る(ようにしか見えない)。
こ・わ・い
「まだ二年前の里美ちゃんの事をひきずっているんですか。そんなに間違って撃った事が怖いんですか」
「そうとも。オレは臆病者だ。最低の刑事だよ」
そんな関町に対して、里美が「関町さんのためにも早く歩けるようになりたい」、それによって誤射の後悔を振り切って欲しいと言っていた事を伝える高瀬だが、それでも関町の悔恨と迷いは消えない。
そんな刑事二人のやり取りを、横でずっと聞いているJPさん(笑)
基地に戻り、かおるがタイツを解析した結果、それが電送スーツの一部である事が判明。ジャンパーソン達は端末から端末へ大量の人員を電送しようという、SSNの真の計画に気付くとともに、パンサーレディの正体が物質電送理論の権威・イシグロサヤコ27歳、である事に辿り着く。
「関町という刑事に知らせに行く」
「どうして?! 彼はあの時銃を撃てなかった。そんな人にパンサーレディの逮捕は無理よ」
ホント怖いよこの人
改めて三枝かおるは、「法で裁けぬ悪を裁く」のではなく、「法律とかどうでもいいから自分の裁きたい悪を私的に裁く」という意識が徹底していて、完全にテロリスト予備軍。というか現状既にテロリストみたいな。
3年前の出来事が元で警視庁を信用していない、では済まされないレベルで、国家と法治に挑戦しています。
ジャンパーソン基地の設備など見るに、海外の複数の隠し口座などに大金が唸っていそうなので、本当に国家とか、どうでも良さそうなのがまた、物凄くタチが悪い。
物凄く私的な運用を繰り返すひとりサンダーバードみたいな感じ。
「私は彼を救いたい。同じ正義を守る者として、彼を立ち直らせてあげたいのだ」
「自分はどうなったっていいの? あなたが死んだら、誰が悪と戦うのよ」
「わかってくれ、かおる。私は、同じ悪と戦う者として、彼を警官として立ち直らせてあげたいのだ」
一方、同じような正義のトラウマを抱える者として、関町刑事に感情移入を見せるジャンパーソン。……まあ、JPさんも、たいがい目線が上からなんですが(笑)
よくよく考えると、自力で乗り越えたといえるか微妙なのに、「なに君? まだトラウマ乗り越えてないの? 生まれてきた意味? ははん、そんなの、自分で作り替えるものなのさ」って、エンジェルにも随分と、立派な先達みたいな事を言っていたし(笑)
一方、刑事を辞職し(?)、拳銃を返納した関町は、里美の元を訪れていた。その脳裏に浮かぶ、「立ち直って下さい関町さん、里美ちゃんのためにも」という部下の言葉、そしてそこに乗り込んでくる、ダークジェイカー。
「パンサーレディの正体が割れた。私と一緒にくるんだ」
命・令・形
更になぜかジャンデジックを渡すが、それを投げ捨てる関町。しかし、そんな関町の姿に、なんと里美がジャンデジックを拾って握りしめる。
「関町さんの弱虫! どうしてそう、自分を責めるのよ。そんなんじゃ、そんなんじゃ、あたしだって惨めじゃない!」
被害者である自分が前を向いて進もうとしているのに、関町がいつまでも後ろを向いていたら、自分が惨めだ――――今回、“車椅子の少女”ネタとしては気持ち悪くならないで済んでいるのは、里美が終始、前向きに描かれている事。またそこが楽天的になりすぎないように、事件から2年間、という歳月を置いているのも細かく秀逸。
「関町さん、貴方はこの里美さんの思いがわからないのか。戦うんだ! この子の気持ちを踏みにじってはいけない」
トラウマの乗り越え方=戦う、が凄くJPさん。
二人の言葉に関町はジャンデジックを握りしめ、ジャンパーソンと関町はパンサーの隠れ家へと向かう。しかし先制の電磁ムチを受けて分断され、自分で撃った機銃の攻撃で本調子でないジャンパーソンは、再び電送装置で内部に侵入されてしまう。前回の反省を活かし、パンサーレディはジャンパーソンのコントローラーを取り外す事に成功し、モニターしている麗子様も高笑い。
「ほほほほほほほほほっ、踊りなさいジャンパーソン! これが貴方のラストダンス! ステップはパンサーレディが教えてくれるわ」
麗子様はいつもながら、台詞回しが変に洒落ていて素敵でございます。
(ジャンデジックは強力な武器だ……外せばジャンパーソンの命はない)
ラスボスの、凶悪なスパルタ。
もがくジャンパーソンへ向けてジャンデジックを構えるも、迷いを振り切れない関町。だがそこに高瀬と里美が姿を見せ、その声援に後押しを受けると、見事に狙撃。端末は一撃で破壊され、パンサーレディは逃げ出した所をワイヤーパンチに掴まれて御用となる。
「あんた……わざとパンサーレディの侵入を許してまで、この俺を?」
「いや、私は、あなたに助けられたのだ。警視庁一の、射撃の名手である貴方に」
ジャンパーソンは敬礼を残して立ち去っていき、刑事達はその後ろ姿を感謝を込めて見送るのであった。
本当はジャンパーソンも任意同行を求めて事情聴取しないといけないような気がするのですが、16話で頓田博士が警官隊に逮捕された時の完スルー、17−18話で判明したジャンパーソンの出自、など考え合わせると、公的にはだんまり、直接的なアプローチはしないものの、どこかの時点で警察上層部から現場に向けて「ジャンパーソンにはいっさい関わり無用」というお達しが出たっぽい。
「パンサーレディ……貴女をこのままにはさせておかない。必ずこのあたしの手でリターンマッチを。それまでゆっくりとお休みなさい」
珍しく、部下を切り捨てない麗子様、パンサーレディの再登場を暗示。
女の子には優しい、という設定でもついたのでしょーか。
ようやく出てきた(多分、今回のみのゲストでしょうが)比較的まともな刑事、重なり合う正義のトラウマ、最後に里美ちゃんの足が大幅に回復するのは少々やりすぎかとは思いましたが(匂わせるぐらいで良かったと思う)、油断しているとすぐに厭な使い方になってしまうネタを適度に収めて、うまくまとまりました。
次回、世界忍者戦JP!