はてなダイアリーのサービス終了にともなう、旧「ものかきの繰り言」の記事保管用ブログ。また、旧ダイアリー記事にアクセスされた場合、こちらにリダイレクトされています。旧ダイアリーからインポートしたそのままの状態の為、過去記事は読みやすいように徐々に手直し予定。
 現在活動中のブログはこちら→ 〔ものかきの繰り言2023〕
 特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)

大トミノ祭:そろそろ終盤『ダイターン3』

◆第34話「次から次のメカ」
超パッチワーク回。
過去カットの継ぎ接ぎ映像で、監督:富野喜幸・脚本:斧谷稔・演出:井草明夫*1の至芸が炸裂。
前回のバンク回(第13話)ではレイカとビューティがダイターン3に乗り込んでいましたが、今回はトッポがダイタンクに搭乗。地上で巨大戦車ニーベルゲンと戦車部隊に襲われる。
一方、マサア型宇宙船2号機(万丈が火星脱出時に用いた宇宙船の同型機。海底のダイターン基地はどうやらこの本船。名称はマザー・コンピュータからの後付けとおぼしい)の慣熟飛行訓練を行っていたレイカとビューティは、大気圏外でメガノイドの宇宙戦艦と戦闘機部隊に襲われる。
12話の、万丈・火星脱出回の使い回しなのですが、そこで使用されたモノトーンのダイファイターが「変形できない安物」という事に。また、敵コマンダーにより、ダイターン3が「メガボーグのメカ部分の実験機を地球で改造したもの」であるという説明が。更に「万丈がダイターン3を2,3台作っていてもおかしくない」など、地上にダイタンク(こちらはダイターン3本体とおぼしい)、宇宙にダイファイターがあるのを、万丈側の戦力強化としてさらっと理由付け。
善戦するダイファイターとマサア2号だが結局は撃破されてしまい、救難カプセルが月に着陸。トッポを拾った万丈がマッハパトロールで二人を回収するが、そこへブッターギルン、更にコマンダー・アントンの指揮する、メガボーグのメカ部分のみを巨大ロボットとして使いソルジャーに操縦させるメガロボット軍団が迫る。
ここでは、ウォン・ロー(10話)、ウェナー(12話)、バンチャー(19話)のメガボーグ体がそれぞれ登場し、過去の戦闘シーンを切り貼りして使用。ラストはアントン自ら操るウォン・ロー型メガロボットをサンアタックで撃破。10話の名シーンが再利用されると若干なんだかなぁというのが無くも無いですが、あまり近い話数のものは当然はばかられるとして、監督もせめて編集作業時に自分で見返していて楽しいところから、というチョイスだったのかしら。
13話も結構面白かったのですが、今回も、全く同じカットでも台詞と編集を変える事で違うテンポに出来るという、アニメーションならではという演出技法が縦横無尽に展開し、苦し紛れと思える超作画節約回ながら、充分に楽しめる出来で恐るべし、富野由悠季
ラストは、決着した戦闘をモニターしていたコロスさん、新規作画を使って、頬杖をつきながら呆れた感じで
「まったく……万丈の言う通り。メカをいかに与えようと、扱う指揮者が無能では、何の役にも立たん。やはり、コマンダーの養成に力を注がねば。まったく」とか、監督の愛が溢れ返っていて、ひたすら可愛い。
周囲への警戒を続けるダイターン3を見ながら、
「ふふっ、メカ恐怖症にかかっておる」
とか、どこまでも可愛い。
こんな回なのですが(だからこそ?)、ダイターン3の秘密が明かされていたり、万丈サイドの戦力強化と明らかな反攻計画の準備が描かれていて、物語としてはけっこう重要な展開をしています。
非常に動きの少ないコマンダー・アントンは、限られた作画の中で個性を出す為にオカマ口調で、演じるは名優・富山敬
◆第35話「この愛の果てに」
行方不明となったコマンダー・マリアとコマンダー・フランケン(9話で駆け落ちした二体)を捕まえるべく、地球へ降り立ったメガノイドの新風紀委員長コマンダー・ジライヤ(CV:永井一郎)。マリアの姿を見たという情報を元にシン・ザ・シティへ潜入したジライヤと配下の忍者ソルジャー部隊は、次々とマリアの面影を持つ女性を拉致。この神隠し事件を隠しカメラでソルジャーの仕業と察知した万丈は、「罠をかけるのがメガノイドの専売特許でない事を、思い知らせてやる」と、街の中に仕掛けたトラップで次々と忍者部隊を始末していく。
万丈、いつも敵陣に突っ込んではメガノイドの罠にはまって「なにー?!」とやる事を、反省はしないが根には持っていたらしい。
そんな戦闘の中、コロスの命令で監視の為に派遣されていた、ジライヤと反目するコマンダー・スミカと、ジライヤとの中年メガノイド同士の間にほのかなロマンスの香りが漂ったりしつつ、万丈との一騎打ちに敗れてエネルギーユニットを損傷したジライヤに、自分には予備ユニットがある、と言いながらエネルギーユニットを差し出すスミカ(ここで胸の装甲部分を開いて心臓の位置からユニットを取り出す如何にもメカ人間な描写は良い)。
ユニットを受け取ったジライヤはメガボーグに変身。カエル型メカとの共同攻撃でサンアタックを打ち破りダイターン3を追い込むが、苦手のヘビを突きつけられ、メガノイド形態に戻ってしまう。逃げまどう彼が目にしたのは、地面に倒れ伏すスミカ。予備ユニットを持っているというのは嘘で、彼女は非常用バッテリーの消費とともに力尽きる寸前であった。その姿に正気を取り戻し、駆け寄るジライヤ。
「わしがなぜメガノイドになったと思う。それはおまえが居たからだ。メガノイドになれば、おまえの側に居られると思ったからだ」
メガノイドはホント、組織としては機能していないよなぁ、という告白(笑)
二人の姿を見た万丈は、代用になる筈だと、ダイターンのエネルギーユニットを手渡す。
その光景をモニターしていた、屋敷の面々。

トッポ「あーあ、なんでこうなっちゃうの?」
ギャリソン「トッポ様も、大きなくなればわかる事で」
トッポ「わかんないやい! まったくもう、大人って嫌いだよぉ」
ギャリソン「その点は、わたくしも、ご同感」
ビューティ「万丈ったら、惚れたはれたが絡むといつもこうなんだから」
イカ「でもそれがまた、万丈のいい所なのよねー。いいわー」
ビューティ「私だってぇ」
トッポ「ひかりゃいいってもんじゃないよ」

トッポとギャリソンが、一番シビア。
まあこれは、苦しい所もありますが、他者に対する「愛」こそが、良き人間性である、と万丈が思っている、という事なのでしょう。
5話における「だが人間の赤ん坊は違う。あの子も今はおまえ達にとって役には立たんだろうが、成長して、人を愛し、また子供を産む事ができる」という台詞を拾っているとも言えます。
それを万丈がメガノイドを赦せる理由にしつつ、必ずしもそれが正しいとも言えないだろう、またそういうのも別にどうでもいいよね、とこの会話の中だけで複数の視点と論理を盛り込んでいる流れが絶妙。
ここで全員に「良かったねー」などとハッピーエンドを肯定させてしまうと、非常に白けるので、このバランス感覚も巧み。
しかしコロスさんは、「これ以上、内部で不祥事を起こさせては、メガノイド全体の士気に関わります」と警戒した結果、更なる不祥事=オフィスラブを呼び込んでしまいました(笑)
まさか9話のネタにここで再び触れるとは思いませんでしたが、全体通して見た時に浮いてしまったエピソード(唯一、万丈がメガノイドを倒さず見逃している)と言えるので、松崎健一が巧くフォローしてエクスキューズをつけた、という所でしょうか。お陰で作品全体が締まりました。非常にいい仕事。
あと面白い所では、ジライヤが旧知のコマンダーである事を、万丈がさらっと発言。少しずつ劇中で明かされてはいたのですが、ここに至る所までのどこかで万丈が自分とメガノイドとの関係性を仲間達にはっきり語っている事が窺えます。
クライマックスへ向けて大きな物語をまとめに入っているので、細かく内容が濃い。

*1:念のため、全員、同一人物です。