「ドン・ザウサーとコロスは万丈の両親なのか?」説についてちょっと考えつつ色々。
前回同様、わからなくても物語上で問題はない事、について出来る限り矛盾を起こさない範囲で拾ってみようという思考ゲームなので、ご了承下さい。
ドンの正体(メガノイド改造前)が破嵐創造、というのは確かにありそうな話ではあるのですが、最終話、目覚めたドンに対して万丈が「人形のようにコロスに利用されていたのだ」と会話するシーンがあって、ドン=創造にしては万丈のドンへの憎しみが足りないかな、という気が。
もしそうだったら、問答無用でぶっ放している気がします(笑)
まあ、実はそうだけど万丈は気付いていない、という可能性はあるかもですが。
コロスに関しては、直接的に母親というよりは乳母、もうちょっと甘酸っぱくするなら、家庭教師のお姉さん、みたいなイメージ。
最終回のやり取りから、万丈がコロスに対して一定の敬意を持っているというか、人間として認めている節は何となく感じられるので、メガノイド化する前の姿を知っているのかなぁ、みたいな気はするのですが。
台詞に聞き漏らしがなければ、そもそも劇中で時期と出来事がはっきりしているのが、「ビューティ父が破嵐創造博士のメガボーグ開発に一部出資していたのが10年前」「万丈と木戸川が出会うのが7,8年ぶり」というぐらいなので、メガボーグはいつ完成したのか? メガボーグはいつ人類に反乱を起こしたのか? 万丈はどの時点で火星を脱出したのか? という重要な時制は全て濁されている為、メガノイドと万丈の関係は、なかなか掴みにくい所があります。
また火星に関しても、38話および最終話で火星に着陸した際は、ほとんど荒野の世界でしたが、開発が進んでいたのか? メガノイドの支配後に人間の都市が破壊されたのか、などは明確には語られていません。
時制に関しては、後で劇中に矛盾が生じないように故意に濁しているという部分もありますが、作劇上、それらが明確に描かれる必要性は無いので、描かれなくても、特に問題は発生していない。
辻褄の合う範囲で素直に繋げるなら、スポンサーもついて10年前にメガノイドの研究開発が進み、その2,3年後に、万丈(破嵐家?)が火星に移住……という辺りか。
他にはっきりしている事は、「幼年時代の万丈は、手品師エドウィンと会っている(地球?)」「旧式のメガノイド・ウェナーに対し、機能停止前のメガノイドがそうやっているのを火星でよく見た、という万丈の台詞」「火星脱出時の万丈は、少年期と青年期の中間ぐらいの顔立ち(これは主観的類推)」「火星脱出に、万丈の母は存命。ただし、姿は明確にされていない」「ダイターン3はメガボーグのプロトタイプ」「つまり、万丈の火星脱出時点では、メガノイド→メガボーグの技術は未完成」「ただし、最終話のドン・ザウサーのように、外部システムを使えば巨大化可能?」「破嵐創造の助手であったミナモトは、万丈を逃がした後も、メガノイドのもと火星で人間のままサイボーグの研究を続けていた」「万丈とコマンダー・ジライヤは旧知」「万丈の母と兄は破嵐創造によって初期型メガノイドの実験に使われて死亡している」「ただし万丈にとって、メガノイドになる=人間としての死、であり、必ずしも厳密な死亡と同一ではない」
19話を見る限りでは月面もあまり開発されていない感じなのですが、火星でメガボーグを開発しているのに月が開発されていないとは考えづらく、これは万丈達が着陸したのがたまたま何らかの事情で開発されていない地域だったか、或いは人類・メガノイド間の闘争が激化して以降、月面が廃棄された、とも推測されます。
その状況で、万丈がある程度メガノイド相手に戦果を収める事により、ビューティ観光が、観光宇宙船を飛ばす、という事業を再開拓したという可能性はある。そう考えると、19話でバンチャーが磁力装置により月面で集めたがらくたは、廃棄された月面都市に残っていた残骸か何かであったのかもしれません。
メガノイドがデスバトルを運用しているように、人類側の宙間飛行技術もある程度は進んでいると考えられ、あとは運用するかしないか次第、という事なのか。
もっとも、火星−地球間を気軽に移動し、単独で大気圏突入離脱を可能なデスバトル級の宇宙船は、人類側にはダイターン3とマサア型宇宙船ぐらいしか無さそうですが。
科学技術的にはメガノイドの方が優れているという事なのですが、メガノイドも元が人間だと考えると、簡単にそれほど急速に技術発展するとは思えず、と考えると、火星開発に携わっていた心身ともに優秀な科学者などがドンの理念に共鳴して自らメガノイドとなったのが、コマンダーより上級とされる、メガノイド側近か。そんな彼等が昼夜を問わずメガノイドのスーパーパワーで技術開発に邁進した結果、デスバトルを初めとする、メガノイドの科学技術の発展が成されたのかもしれない。
とすると、メガノイド側近がコマンダーを低く見るのも、その辺りに起因するとも考えられます。
話が色々とずれてきましたが、ドンとコロスの正体に関して、矛盾なくしっくり来る辺りだと、ドンは破嵐創造の第一助手、コロスは破嵐創造の秘書兼助手兼火星での万丈の教師役、と言った所かなぁ。あくまで、極めて個人的な妄想ですが。
あと最終決戦で、追い詰められた万丈の脳裏に父の声が響くというシーンはむしろ、ドン=創造説を採ったほうが、ドン(創造)の中に残っていた人としての良心が万丈に呼びかけて……と綺麗には繋がります。
ついでに、ドン=創造で、コロスはそれを慕う秘書、とかすると、凄く富野ワールド(笑)
ただ、個人的にはあまり、ドン=創造、とは思ってはいない。
後ポイントしては、コロス(及びドン)は18話ゲストキャラのミナモトに対してかなり甘くて、有能な人物であるという事を踏まえても、強制的にメガノイドに改造する事なく手元で使っており、逃亡後も、あくまでも殺害するのではなく、捕らえて連れ戻すように命令を出している。これは何らかの形で、人間の頃の情がそうさせていたのかな、などと考えています。
まあ色々とつついてみましたが、この辺りは、はっきりしないから面白いよなぁと。
実際に制作側が考えていたのか、考えていなかったのか、それもわかりませんが(初期設定はあっただろうけど、TVシリーズの初期設定など展開に合わせて劇中の事実とは限らなくなるもの)、それもまた面白いし、それでも面白い。
明確にならない謎があっても、面白いものは面白い。
そういう面白さもあるし、逆に、見せる事で面白くなくなる場合もある。
重要なのは、設定を全て見せる事、ではなくて、物語を成立させる事。
基本的に富野作品は、多くの背景設定があった上でなお、“劇中で表現されなかった設定は、必ずしも劇中の事実とは限らない”という世界であり、そこが良い所であり好きな所。