「貴方にとっての親友は誰? 奥さん、お父さん、それとも幼なじみ? 親友には何かあれば最初に話したくなるし、貴方の事なら何でも知ってて、いつも応援してくれる存在。もしそんな親友に秘密があったとしらどうする? しかも一つじゃない。秘密だらけだったら? 直接問いただす? それとも黙ってる? どっちにしろ、今までと同じ関係は続けられない」
OPナレーションから、圧倒的な面倒くささを発揮するアイリス。
個人の思想としてはどうぞご勝手にですが、正ヒロインとしては、ホント辛い。
そしてそんなアイリスの理屈に好感度の高い主要人物達が次々と殴られていくのが凄く辛い。
前回、ウェルズ博士に拉致されたまま行方不明のエディを捜し回るバリーだが、街では連続金塊強盗が出現。金塊保管所が襲撃され、重武装の犯人に立ち向かうFLASHだが、突然、強烈な恐怖のイメージを受けて倒れ、犯人に逃げられてしまう。ラボに戻って治療を受けるバリーは、不信感剥き出しで乗り込んできたアイリスと赤いスーツ姿でごたいめーん。
やすやすとアイリスの侵入を許してしまうスターラボの面々が緩すぎますが、今回、ウェルズ博士が消えた事で不本意ながらバランスを欠いてしまうヒーローチーム、というのが全体のスパイスとして機能。
「怒ってるだろうね。相当……怒って当然だ」
「怒ってるんじゃない。私。……でも、がっかりしてる」
怒り心頭のアイリスをなだめようとするバリーだが、相変わらず《説得》スキルには1ポイントも割り振っていないので判定に失敗し、ますます燃え上がるアイリス油田。
「待って待って、まさか、パパも知ってたっていうの? パパが私に黙ってろって言ったの?」
ハイ、概ね、その人が原因です。
ラボを出て行ったアイリスに、今度はバリーから話を聞いたジョーが接触。
「俺が…………間違ってたかもな。……いや、違う。間違ってた。おまえを守りたかったんだ」
「その言い訳はもう、聞き飽きたわ」
アイリスが絡むとジョーの人間性が急降下するので、この件に関しては弁解の余地は全く無いのですが、デフォルトで人間性に問題のあるアイリスはアイリスで話が勢いで色恋沙汰に及ぶと「誰かが正直に話してくれてたら、きっとエディは捕まってなかったわ。彼が私と付き合ってなかったら巻き込まれてなかったかもしれない」とか口を滑らすので、すっごい地獄絵図。
秋波をカットするだけカットしていたのは棚に上げ、バリーの気持ちに気付いていたならどうして教えてくれなかったのか、と身勝手にキレるアイリスですが、そんな羞恥プレイに陥ったら、バリー、死ぬ。(2話連続2度目)
個人的にここまでのアイリスへの好感度の積み上げが全く無いので、色眼鏡が入っている自覚はありますが、今回、正ヒロインとしてのアイリスの存在をクローズアップしてその感情に焦点を当てれば当てるほど、アイリスの「自分のプライドは大事」だけど「他人のプライドは尊重しない」面がさらけ出されて、阿鼻叫喚。
「て事はおまえ、バリーの気持ちを知ってたら……」
「言いたいのは、エディが捕まったのはパパのせい、て事よ」
いっけんエディを心配しているようで、根本的な所では、ジョーのせいでルート選択を間違えなければエディなんて私の人生の眼中に無かった、という宣言であり、心底酷い。
今作の三角関係において何が酷いって、百歩譲って、アイリスがエディと同棲しつつもバリーを憎からず思い続けている、というのを許容するにしても、そのアイリスがエディと付き合っている理由が「なんとなく……」以上に描写されない為、「本当はバリーが好きだけど、現在はエディと付き合っていてこういう風に幸せ」――つまるところ、アイリスにとってのエディの存在意味――にまつわる表現が限りなく薄く、話が進めば進むほど、アイリスにとってのエディが「バリーの代用品」と化している事。
勿論、アイリス×エディのカップル描写に時間を取っている余裕があまり無かったという事情はあるのでしょうが、しかしそれをやらないとアイリスの印象が悪くなる一方なのは目に見えていたわけで、本当に今作、他が良く計算されているだけに、アイリス周りだけ綺麗に抜け落ちているのが首を捻ります(^^;
当のエディは博士によって監禁中で、居なくなって初めてわかる存在の大切さ、の代わりに、居なくなって初めてわかる「あいつ、別にこの世界に要らなかったね」という、残酷すぎる扱い(涙) …………て、あー、ウェルズが前回言った「君は、ただの保険にすぎない」というのはもしかして、状況次第でエディを次の容れ物にする、という事なのかなぁ……。
アイリス問題はさておき、武装連続金塊強盗を確保するFLASHとジョーだったが、覆面の下の正体は、なんとエーリング大将! 二人はひとまずエーリングをパイプラインにぶち込むが(いや、表向き連続強盗事件の容疑者なのですが、毎度の事ながらそんな気軽に拉致っていいのか)、エーリングはまるで人形のような反応を見せると、奇妙な事を口にする。
「俺の……名前は……グロッド。俺を、恐れろ」
グロッド、それは、かつてウェルズとエーリングが共同で進めていた、兵士の認知能力を高める研究――平たく言えば、超能力兵士の作成――において実験材料にされていたゴリラの名。粒子加速器の爆発後にラボから行方不明になっていたグロッドは、エーリングによる投薬とダークマター波の影響により、テレパシー能力を操るスーパーメタゴリラと化していたのだ!
リバースによってさらわれ、姿を消してから3ヶ月……グロッドの操り人形にされて現れたエーリングがこれみよがしに起こした事件の背後にウェルズの影を感じたバリー達は、またも乗り込んできたアイリスからの情報提供(新聞社勤め、役に立つの巻)によって、グロッドが潜んでいるかもしれない下水道の探索へ向かう。
潜入した3人(バリー、ジョー、シスコ)を最初シルエットで見せて、護身用にか珍しくシスコが拳銃持ってる……? と思ったら、画面明るくなったらバナナだったというのは面白かったです(笑)
薄暗い下水道・壁に刻まれた文字・外部モニター映像、と正調サスペンス演出をたたみかけ、
「『ジュラシック・パーク』を見てなかったら、ここまでビビる事はなかったのに」
と、今回、みんなもっと映画ネタでツッコめよ! 基礎教養でしょ?! を繰り返していたシスコが、必要以上に想像力の翼を広げない事も人生大事、となる小ネタも秀逸。
一方、スターラボに残る女性陣。
「あなたに嘘をついて、バリーは苦しんでたわ」
「当然よ。……あなたも嘘をついた。婚約者の事」
率直にケイトリンの立場では、アイリスにそんなデリケートな私事を話す必然性が全く無いので、アイリスの自分本位がますます滲み出ます。
「ロニーの事ね。……加速器が爆発した時に死んだと思ってたんだけど……ただ少し……燃えただけだった」
さすがにばつの悪そうな表情になり、女同士で地雷を踏んだ事については反省しましたが。
下水道では、グロッドの精神攻撃を受けてバリーが気絶、ジョーがさらわれてしまい、バリーを抱えてシスコが一時撤退(鍛えているからお茶の子さいさい)。さっそくスターラボの面々に噛みつくアイリスが物凄く嫌な感じ。
本来なら、ただでさえエディが行方不明な上にジョーまでゴリラにさらわれてパニック状態なので同情すべき余地がある、という作劇なのですが、なにぶん本心ではエディの事がどうでもいいらしいのと、アイリスが口を滑らせるのは仕様の為、ただただ嫌な感じです。
「貴方の事を誰よりも知ってると思ってたのに、どうして黙ってたか。しかも人生が大きく変わるような事を。貴方の事を親友だと思ってたのに、違ったの?」
「もちろん親友だよ」
「それならどうしてよ?! 大事な事こそ親友に話すべきなのに、なんで話してくれなかったの? なんで全部隠してたの?! しかも、嘘までついて。そんなの酷いわ」
アイリスは徹頭徹尾、「私は親友に対してそうする」ではなく、「私が親友認定したおまえはそうすべき」と押しつけてくるのが悪質なわけですが、クライマックス直前になって、アイリスの孕む毒がこれでもかと噴出してスターラボの床を赤黒く染めていきます。…………まあ、よくよく考えてみると、アイリスの性格がここまで歪んだのって、家庭内に常に精神的奴隷(バリー)が居た影響はありそうなので、責任の一端はバリーにあるような気もしますが。
「だからわかってるって、全部僕のせいだ。でも君も、正直に話してない事があるだろ」
そのバリーが追い詰められて自棄気味に色恋ネタを持ち出すと、それに対して口をつぐむアイリス、という相変わらずの最低カップルぶり。君達! エディの事! ナチュラルに過去の思い出にするなよ!
この間ずっと、暗い部屋で食事も与えられずに椅子に縛り付けられっぱなしという、可哀想なエディは、「おまえは刑事としてもろくに出世しないし女も奪われるし、一族の落ちこぼれだ」と、未来を知るイオバードから煽られていた。
「落ちこぼれだと? 俺が何したっていうんだ」
「……エディー。そんな事聞くのか。どこから始めよう」
ここの台詞回しが、最高でした(笑)
「君は、ソーン一族の中で唯一歴史に残らない人物だ」
……うーん、だから、いざという時は成り代わっても歴史に与えるリスクが少ない、と考えると凄く不穏になってきたなぁ…………(^^;
スターラボでは、シスコとケイトリンが超特急で仕上げた抗テレパシーヘッドセットをつけたFLASHが再出陣。下水道に置いてきた装置から蒸気を噴出させ、誘導したグロッドに8.5kmマッハパンチを放つが、まさかの、「ぬるいわ!」で受け止められてしまう! 連続パンチでもダメージを与えられず、追い詰められたFLASHはヘッドセットを破壊されてテレパシー攻撃で行動不能に。地下鉄の線路に投げ飛ばされたFLASHに列車が迫るその時、ラボからのアイリスの声がFLASHの正気を取り戻させ、なんとか回避に成功。
チームの歯車が狂った所に現れる強敵、最大の窮地に陥ったヒーローをその正体を知ったヒロインが救う……と、物凄く燃える展開の筈なのですが、肝心のヒロインへの好感度が地獄の第九圏辺りの為、心の針がピクリとも振れません。
グロッドは別方向の電車と衝突して姿を消し、FLASHは無事にジョーを救い出すが、ウェルズの行方は杳として掴めないのであった……。
グロッドが大きなダメージを負った事で(?)、マインドコントールの解けたエーリング大将は、パイプラインから解放。
「ここはメタヒューマンを収容する場所だ。刑務所じゃない」
て一応、そういう理屈で倫理観に言い訳していたのか。……そのまま受け止めると、「メタヒューマンであるFLASHがメタヒューマンの人権を認めていない」という事であり、物凄い地雷なのですが、諸々考えると、かなり意識的にやっているのかも。
「……だけど報いは受けますよ。いつかね」
「私の判断が間違っているとは思ってない。メタヒューマンの恐ろしさは見ただろう。こんな牢屋じゃ、足りない」
当面はウェルズという共通の敵が居るから手は出さない、と言いつつも、FLASHの正体を知り、軍隊を動かせる、という非常にややこしい人を解放してしまいましたが、これは、メタヒューマンと人類社会の関係、という今後の物語展開への大きな布石でしょうか。
ここ数話で強調されてきた要素を考えると、未来のFLASH/バリー・アレンは、メタヒューマン狩りの先頭に立っていて、リバースはその抵抗勢力、とかだったりするのかなぁ……。
ところで、FLASHの正体よりも、民間人を拉致って私設刑務所にぶち込んでいる事を知られた方が大問題な気はするのですが、もう一つの問題は、果たして、3ヶ月も無断欠勤していたエーリング大将は、職場に机が残っているのか。
意気揚々と「ひゃっはー! ゴリラ狩りだー!」の前に、軍法会議が待っていそうな予感。
死の淵を除いたジョーは深く反省してアイリスと仲直りし、スターラボの愉快な仲間達も改めて結束。
「3人なら何でもできる」
「3人じゃない。4人居たわ」
という台詞そのものは凄く良いし、通常なら、大きな変化が起き、正体バレによって険悪な状態になった所から新たなチームの可能性が見える……という詰め具合に感心する所なのですが、肝心のヒロインへの好感度がタルタロスの辺りを彷徨っている為、全く嬉しくなくてどうしたものか。
改めて言葉をかわしたバリーとアイリスは更に距離を縮め、着々と歴史から消し去られそうな雰囲気になってきたエディをとってつけたように心配するその姿に、ばっちり生きていたグロッドが代理として怒りの咆哮を上げる――(ようにしか見えない)。
そして、ドブに落ちた1円玉のような扱いのエディに嫌がらせを行いながら、一人何かの作業を続けていた気持ち悪い博士は、真空管のような物を完成させる。
「やっと…………鍵を手に入れた」
アジトを出て、巨大な施設に隠された装置の中に、その管をはめ込む博士……て、あれここ、映像からするとパイプラインの中?
「――うちに帰れる」
で、つづく。
長らく細かな伏線を張られていたグロッドが遂に本格登場し、8.5kmマッハパンチを片手で防御・連続マッハパンチのダメージ0・精神に直接恐怖攻撃・人間の行動を操作可能・電車に轢かれても大丈夫☆、と普通に出すと白けるレベルの強敵ぶりを披露。あのジョーを恥も外聞もなく死の恐怖に怯えさせるなど、人間とは全くスペックの違う野生動物に、高度な知性が備わったら強くないわけがない、というのをこれでもかと主張してくる、ゴリラフィーバーでした。
さすがにフルCGのゴリラをぐりぐり動かすのには限度があったのか、直接対決の時間は少なめでしたが、そこでエーリングを再利用してきたのも上手かったです。
いよいよ残り2話で、次回――「ライバルの罠」(「Rogue Air」)。原題からすると、ここに来て、コールド回? これだけ正ヒロインに不満がある上でなお、凄く面白いのですが、そろそろ、物語的に<シーズン1>がどの辺りでぶった切られるのか不安になってきました(笑)