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『魔術師』(ジェフリー・ディーヴァー)、読了

魔術師(イリュージョニスト)〈上〉 (文春文庫)

魔術師(イリュージョニスト)〈上〉 (文春文庫)


 音楽学校で学生が殺されるが、その容疑者と思われる男が窓がなく出口を封鎖された部屋の中から忽然と姿を消すという、謎めいた事件が発生。現場に残された証拠品などから犯人は手品に精通している疑いが浮上し、イリュージョニスト見習いの少女カーラの助けを借りるリンカーンらだが、手品の演目に見立てた第二の殺人事件が発生してしまう。果たしてリンカーンらは、神出鬼没の怪人の凶行を食い止める事ができるのか?!
科学捜査のプロフェッショナル、リンカーン・ライムと、そのパートナーとして現場鑑識を行うアメリア・サックスのコンビをメインに据えた、<リンカーン・ライム>シリーズの第5作。なぜ1作目の次に5作目を読んでいるかというと、あらすじを見て面白そうだったからです。
1作目に比べるとだいぶ距離の縮まったライムとサックスが対決するのは、手品に見立てた残酷な殺人を行う“魔術師”。優れたイリュージョニストと思われる魔術師は、まさしく神出鬼没にして変幻自在、ライムの予想すら遙かに上回る並外れた技術の数々で次々と警察を出し抜いていき、その趣はまさしく“怪人vs名探偵”。
変装に鍵開け、物を隠すのは朝飯前、計画性と即興性を兼ね備え、度胸もある超人的犯罪者を相手に、地道な科学捜査でじわじわとその包囲を狭めていくライム達、をストーリーの軸に置きつつ、公判を控えた極右翼団体の指導者を巡る怪しい動きなど、幾つかの出来事が複雑に絡み合っていく、というのは第1作同様。
主旋律に絡んできた伴奏がいつの間にか主旋律を乗っ取っていたり、場違いと思われていたフレーズが気がつくと主旋律と一体になっていたりと、大ボリュームの中にこれでもかと詰め込まれ要素が一つの物語を成すにいたる、手綱捌きは今作でもお見事。
物語進行のテンポも良くたるみがないのですが、一方で、敵また敵、スリルまたスリル、という構成が500ページ近く延々と続くので、面白いけど脳が疲れるのが玉に瑕(^^;
サスペンスの常套手段ではありますが、読者に対してキャラクターの命を人質に取った状態、が長く続くので、読み終わると(心地よくはあるものの)どっと疲労します。
その分、読者を振り回すのに使ったキャラクターの扱いはかなり誠実で、一通り丁寧に決着をつけてくれるのは良い所ですが(その分また長くなる)。
適度に間を空けながら、シリーズ他の作品も少しずつ読んでみたい次第。